カウンセリングを受けてみようと考えているうちに、
「ピアカウンセリング」
という言葉に出会った人も多いのではないでしょう?
定額制で好きなだけ相談できる
では、このピアカウンセリングとは一体どういったカウンセリングなのでしょうか?
ピアカウンセリングとは、
精神疾患者同士が支え合う自立生活運動
として1970年代に米国でスタートしました。精神疾患を持つ者同士が自立するために自立するための情報を共有したり、お互いを精神的に支え合うことで自立を目指す仲間(ピア)同士のカウンセリングです。
ここでは、
- ピアカウンセリングの意味とは?
- ピアカウンセリングと一般的なカウンセリングの違い
- ピアグループとセルフヘルプ・グループ(自助グループ)の違い
- ピアカウンセリングのメリット・デメリット
について解説しています。
あなたが、ピアカウンセリングの意味やメリット・デメリットのどちらもきちんと理解することでカウンセリングの選択の幅を増やすことができれば何よりです。
ピアカウンセリングの意味とは?
ピアカウンセリングは、
- 「ピア(peer)=仲間」
- 「カウンセリング(couseling)=カウンセリング」
を結び付けたものです。
ピアカウンセリングとは?
カウンセリングとは、適応上の問題を理解し、解決できるよう、他の人の援助をすることになります。
ピアとは、同じような障害を持つ当事者同士ということになります。
すなわちピアカウンセリングとは、同じような障害を持つ当事者同士が適応上の問題を理解し、解決できるようお互いに援助するカウンセリングであると言えます。
ピアカウンセリングの「カウンセリング」とは?
カウンセリングとは、
適応上の問題を理解し、解決できるよう、他の人がその援助につとめるというような関係
引用:『心理学辞典(有斐閣)』
とされます。
もちろんカウンセリングには様々な意味があり、
「他人の個人的障害の解決が可能となるよう援助できる資格を備えた専門家と相談者との1対1の関係において生起する過程」
あるいは、
「二人の人の間の社会的学習の相互作用である」
という定義もあります。
でも、ピアカウンセリングの「カウンセリング」では「1対1」の関係やカウンセラーと相談者に限定されたものではありません。つまりピアカウンセリングの「カウンセリング」は適応上の問題を理解し、解決できるよう、他の人の援助をお互いにするカウンセリングということになります。
ピアカウンセリングの「ピア」とは?
ピアとはPEERと表記され、
同僚・仲間・同輩
を指します。
特にピアカウンセリングにおける「ピア(=PEER)」は仲間や同輩であり、同じような精神疾患や障害を持つ当事者同士ということになります。
この2つが組み合わさったものがピアカウンセリングということになります。
ピアカウンセリングと一般的なカウンセリングの違い
一般的なカウンセリングでは他者を援助できる知識や経験を備えた専門家であるカウンセラーが心理的援助の必要な人の「ココロのサポート」を「ココロの専門家」として行います。ただ、カウンセラーが心理的支援が必要な人と同じような境遇や体験をしたのではなく、あくまでも専門的な心理スキルを活用して相談者のココロのサポートを行います。
一方で、ピアカウンセリングでは「ココロの専門家」としてのカウンセラーが必要とはされていません。ピアカウンセリングでは、カウンセラーが傾聴するなどの心理スキルを活用するのではなく、あくまでも同じような境遇や体験をした同じような精神疾患・障害を持つ当事者同士がカウンセリングを行います。
そしてピアカウンセリングの実施に際してはピアカウンセラーがピアカウンセリングの運営をサポートするといったイメージになります。つまり、ピアカウンセリングを行う際のピアカウンセラーはココロの専門家でなくでも大丈夫なのです。
あくまでも同じような精神疾患・障害を持つ当事者同士がカウンセリングを行っているのがピアカウンセリングとなり、一般的なカウンセリングとの違いは、
- ココロの専門家の有無
- 1対1のカウンセリングではない
- 心理スキルや心理的知識が援助の基盤ではない
などがあげられるでしょう。
また、一般的なカウンセリングでは60分で10,000円程度が相場となりますが、ピアカウンセリングでは費用が高額であることはほとんどありません。無料で体験できるようなところもあり、一般的なカウンセリングとは料金・価格にも違いがあると言えるでしょう。
ピアカウンセリングとセルフヘルプ・グループの違い
ピアカウンセリングとセルフヘルプ・グループ(=自助グループ)はとても似ています。
実際にセルフヘルプ・グループの定義には、
同じ問題や悩みを抱えた人々が集まり、相互に援助し合うことを通じて自己の回復を図る治療グループであり、治療者や指導者をおかないグループ
参考:『心理学辞典(有斐閣)』を一部改正
ただ、セルフヘルプ・グループは1930年代にアメリカでアルコール依存者のグループ活動にその起源があるとされています。そこからギャンブル依存や薬物依存など嗜好問題を中心に発達したグループがセルフヘルプ・グループです。
ピアカウンセリングとセルフヘルプ・グループはとても似ていますが、セルフヘルプ・グループには、
- 嗜好品の問題が基本にある
- 回復のためのプログラムがある
- 治療である
- 同じ経験をした人しかグループには参加できない
などがあります。
ピアカウンセリングとセルフヘルプ・グループの違いとしてはこれらの点が違いと言えるでしょう。
ピアカウンセリングのメリット・デメリット
ピアカウンセリングにももちろんメリットである効果とデメリットが存在しています。ここではピアカウンセリングのメリットとデメリットについて解説しています。
ピアカウンセリングについて調べているあなたがピアカウンセリングに対して少しでも正しい知識を持つことができれば何よりです。
ピアカウンセリングのメリットとは?
ピアカウンセリングのメリットは共感によって気持ちが楽になる
人は誰かに自分自身の苦しみや悩みを共感してもらうことで気持ちが楽になるものです。それが、同じような境遇にいたり経験をしている人であれば本当の共感を得れたと感じることができ、気持ちは楽になります。
1対1のカウンセリングでもカウンセラーからの共感を得ることで気持ちが楽になることは当然ありますが、やはり同じ境遇にいたり経験をしている人から本当の意味での共感を得ることは「自分と同じ悩みを持っている人がいる」という確信的な共感となり、気持ちは間違いなく楽になるでしょう。
また、同じような悩みを抱えている人が「自分一人じゃない」と思えることも孤独や孤立感から解放されることで安心につながります。この安心によって気持ちが楽になることも当然あるでしょう。
ピアカウンセリングによって「気づき」を得ることが可能
同じような悩みを抱えている人の共感や安心感は気持ちを楽にしてくれます。
そして、気持ちが楽になることであなた自身の視野や考え方も広がりを見せ始めることがあります。一人で思い悩み考えている段階ではどんどん悪い方向に考えていたとしても気持ちが楽になることで考え方や見方に変化が起きます。その変化こそがあなた自身の気づきをサポートしてくれます。少しで気持ちが楽になってゆとりを持てることで気づきが自然に出てきます。
そして、ピアグループの気づきは単にゆとりを持ってモノを考えれることだけにとどまりません。同じような経験をしている人たちの考え方やモノの見方あるいは過去に解決した方法を知れることで物事の直接的な気づきも得れることになります。
ピアカウンセリングに参加している仲間が実践した方法や考え方を聴くことで、誰かに言われて何かをやるよりもより効果を持った自発的な思考が働くようになります。何よりも、仲間がしたことを同じように実践してみようと思えるようになります。
解決方法や考え方、気づきを得れることはピアカウンセリングの大きなメリットであると言えるでしょう。
ピアカウンセリングによってコミュニにケーション力があがる
普通に会話をする場合には、自分の情報や秘密を知られたくない情があると、知られたくないという思いが先走ってしまうことで自分の話しをするときに「身構えてしまう」ことはよくあります。でも、周りのみんなが同じ悩みを抱えている仲間だという思いを持って、仲間が受け入れてくれる前提で話しをできることは思いを正確に伝える原動力になります。
また、あなた自身が発言するだけではなく、同じ境遇や環境にいる仲間が話しをしている姿や会話を聞くことで「こういった風に伝えればよく伝わる」「理解を得れる話し方はこれだ」など、まわりの人の会話が参考になり、あなたのコミュニケーション力は向上することが期待できます。
一般的な見知らぬ人たちとの会話ではあなた自身の思いを正確に伝えることも、相手の本質をくみ取ることも簡単ではありません。でも、同じような境遇にあったり同じような経験をしている人だからこそ仲間意識や安心感が会話にひそむ難しさを取っ払ってくれるものです。
自分を受け入れてくれるような「安心できる場所」「安心できる空間」でのコミュニケーションはあなたのコミュニケーション・スキルそのものを上げてくれることでしょう。
ピアカウンセリングのデメリットとは?
ピアカウンセリングにはココロの専門家は不在である
ピアカウンセリングではピアカウンセラーと言うカウンセラーは存在します。ただ、ピアカウンセラーは「ココロの専門家」ではありません。ココロの専門家が存在しないことで、運営では様々な問題が生じることがあります。
例えば、専門家がいないことで、
- 一部の参加者だけがずっと発言を繰り返す
- 会話が上手い人に他の参加者の感情が呑み込まれてしまう
- いつの間にかテーマからそれてしまう
などの事態も起こり得るでしょう。
ひどいときは他者の発言や態度に同じ参加者に不快感を覚えることもあるでしょう。もちろんピアカウンセラーもスムーズな運営を前提としていますが、集団に生じるダイナミズムにピアカウンセラー自体が呑み込まれることもあります。
このようにスムーズではない展開になってしまった場合はピアカウンセリングによってココロの状態が悪化することもあります。これはピアカウンセリングにおける大きなデメリットであると言えます。
ピアカウンセリングでは仲間への依存度が上がってしまう
どれだけ苦しい思いをしても、ピアグループにいけば仲間に話しをして気持ちを理解してもらえるといった安心は大切です。
でも、その安心そのものが強まり過ぎてしまうと、やがては仲間やピアグループへの依存的な気持ちにつながってしまうこともあるでしょう。
ピアカウンセリングでは同じような悩みを持った仲間が集まります。その安心から悩みを共感してくれる仲間の存在そのものがあなたの努力や成長を止めてしまうこともあるでしょう。過度に仲間への依存度が高まってしまうとチャレンジする気持ちや努力を忘れてしまったり、ピアカウンセリングに行かないと自信が持てないなどの依存的なココロの状態にもつながり兼ねません。
ピアカウンセリングで得れる安心は気持ちの依存につなげるのではなくチャレンジの糧にするように心掛けることが大切になります。
ピアカウンセリングでは「不幸自慢」が生じることもある
あなたにも不幸自慢の経験は一度はあることでしょう。「私は仕事で〇〇なストレスにさらされていて」と言うような話しを聴くと会話泥棒のように「私は△△のストレスにさらされたことがあって、、、」と話し始める人もいます。
ときに不幸な境遇や辛い経験をした人は、それを自分は乗り越えたんだという思いを承認されたい気持ちなどから「不幸自慢」を始めることがあります。あるいは不幸だったことで生じる免罪符などを手にするために不幸話しをする人も実際に存在します。
でも、ピアカウンセリングは不幸自慢をする場所ではありません。同じような辛い思いをしたり、経験した人たちが立ち直れるような環境になってこそ、ピアカウンセリングのあるべき姿だと言えるでしょう。
「ピアカウンセリングとは?」のまとめ
一般的な心理カウンセラーと相談者によるカウンセリングでも、ピアカウンセリングでも大切なことは傾聴による共感です。
人は誰かに思いを共感してもらえることで安心することができるものです。そして、この共感が同じような経験をした人の共感であった場合に、カウンセラーからの共感以上に安心を感じる人もいるでしょう。
カウンセリングでは、カウンセラーとの1対1でのカウンセリングが原則となってしまいますが、ピアカウンセリングでは同じような境遇にある「仲間からの共感」を得ることができます。その共感はカウンセラーが示す共感的理解とはまた違う安心を感じ取れるものでしょう。
ピアカウンセリングでのメリットやデメリットをきちんと理解したうえで、ピアカウンセリングを活用することは大切なことでしょう。ピアカウンセリングを正しく把握して、ピアカウンセリングを正しい知識で利用できるようになるために、この記事が参考になれば何よりです。