精神疾患(うつ病)

うつ病で休職中の人が復職するときの3つの注意点|労務管理の注意も

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現在、日本において精神疾患により医療機関にかかる患者数は増え続けています。

厚生労働省のデータによると、精神疾患の患者数は、次の図のようになっております。

引用:厚生労働省「自殺・うつ病等の現状と今後のメンタルヘルス対策」より

データを見ても日本の精神疾患の推移は確実に増加傾向になっています。なお、日本における精神疾患とは、

  • 神経症性障害
  • ストレス関連障害
  • 気分障害(躁うつ病を含む)
  • 統合失調症および妄想性障害

などです。

また、特にうつ病において注意すべき点は、初回治療をした後の、

うつ病の再発率が約60%

ほどある点です。

この数字を見てもうつ病の人が休職した際の職場復帰がいかに難しいのかが分かります。うつ病の人が職場復帰する上で最も大切にしなければいけないことは何でしょうか?

それは、

心理カウンセラー
何よりも復職をあせらないこと!

です。

うつ病の再発を繰り返すことで、職場復帰自体が難しくなることも珍しくありません。うつ病である本人はもちろんうつ病で復職を考えている家族や職場も本人のあせる気持ちを促してはいけません。

仮に「本人がもう復帰できる!大丈夫!」と感じていたり、言っていても主治医の意見を聞き、きちんとうつ病である本人の様子を観察したうえで「復職が可能かどうか」の判断をすることを心掛けましょう。

もちろんうつ病の本人も復職を焦ってはいけません。ただ、うつ病で休職していた人がいよいよ「復職を考える」という時期は必ずやってきます。

うつ病で休職中の人が復職を考える際には多くの注意が必要になります。ここでは、うつ病で休職中の人が「復職しよう」と思ったときに注意すべき注意点を大きく3つ記載しています。

また、職場の同僚が後輩がうつ病で復職していたり、労務管理をする人たちも知っておくべきうつ病で休職中の人が復職する上での注意点を記載しています。

うつ病の休職者が復職をする際の3つの注意点とは?

あなたがうつ病で休職をしているなかで、「そろそろ復職を!」と考えているのではあれば、ぜひここにある注意点を参考にしてください。

焦りや不安から復職をしても、再び同じ状況に陥っている人たちは多くいます。あなた自身がうつ病での休職を再び繰り返してしまうと、他でもないあなた自身が再び苦しむことになってしまいます。うつ病による休職を二度と繰り返さずに、きちんと復職するためにも、

  • 復職への焦りがないか?
  • 復職しても無理をしない
  • 復職してからの体調管理

について、きちんとあなた自身の気持ち向き合い、一つずつ確認をしていきましょう。

1,  復職への意思が焦りからきていないか?を再考する

うつ病の休職者は職場に大きな負担をかけてしまうという認識をしている人も少なくありません。そのため「早く職場に復帰しなければならない」という気持ちに支配されがちです。但し、この「復職しなければならない」という気持ちに支配された状態で判断をしてしまうと、うつ病としての復職としては正しい判断には至らないこともあります。

また、この支配された気持ちで復職をしてしまうと休職前と同様に「無理をしてでも頑張る」という気持ちにすぐになってしまい、結局のところすぐにストレスを感じてしまうようになってしまいます。

うつ病からの復職に焦りは禁物です。あなたのうつ病の休職中からの「復職したい気持ち」は焦りからきていませんか?今一度、自分自身の気持ちと向き合うようにしましょう。

心理カウンセラー
再発しないためにも、焦りや不安よりも自分自身の体調を最優先することを覚えましょう!

2, 通院(服薬)を続け、復職をしても無理をしないと心に決める

もし、あなたが無事に復職することができたとしても「無理はしない」ことを常に意識するように心掛けましょう。また、通院していたり、薬を処方してもらっている場合などは「セルフジャッジ」で通院をやめたり薬を止めてしまうことはNGです。

主治医の先生の判断を仰ぎながら少しずつ元の生活に戻すように心掛けましょう。くれぐれも自分自身の判断で通院や服薬をやめることはしないようにしましょう。

心理カウンセラー
繰り返しになりますが、うつ病は再発率の高い疾患です!

3, 復職してからは特に体調管理を徹底する

休職の後に復職した場合、肉体的にも精神的にもうつ病で休職する前よりも大きな負担を感じることとなります。

体調管理については特に生活のリズムを意識するようにしましょう。

まずは睡眠です。とにかく夜は早く寝るようにしましょう。睡眠時間は睡眠を取っている時間も大切ですが、入眠する時間にもこだわるようにしましょう。睡眠のゴールデンタイムは22時~2時と言われています。遅くとも日付が変わるまでには睡眠をとりましょう。

次に食事ですが、食事については1日3食をきちんと取るように意識しましょう。最低限の栄養を取ることが最も大切ですが、生活のリズムが出てきたら無理のない範囲で栄養素にも気を付けるようにしましょう。

心の安定につながる栄養に興味がある人はこちらを読み進めてください。

ストレスと食事の関係!キーワードになる2つの「3」とは?

心理カウンセラー
ストレスと食事には大きな関係があります!

労務管理に携わる人が知っておくべきこと

うつ病から復職する人たちを迎える周囲の人たちもうつ病に関する予備知識を持っておく必要があります。ここではうつ病を簡単に説明しています。

接し方や対応の仕方など、とにかく復職した人たちのためにも復職しやすい環境づくりを意識する必要があります。労務管理に携わる人事担当者や上司が「不安」を払拭することで再発率は大きく下がります。

復職する側の当事者も焦りを持って働きすぎることが考えれます。まずは労務管理に携わる人たちがうつ病に対する正しい知識を持って、職場環境を整備するようにしましょう。

そもそもうつ病とは?

最近では、これはもはやうつ病ではなくて甘えでは?と思うような症状を発症する若者も多くいます。

もしあなたの職場にいるうつ病の症状を持つ人に対して、行動や言動に甘えを感じる場合はこちらを読み進めてください。

うつ病なのか?甘えなのか?仕事に行きたくないあなたへ

心理カウンセラー
非定型うつといううつ病の新たな症状が存在しています。

一般的なうつ病とは気分障害に分類されるモノで、

  1. 双極性障害
  2. うつ病性障害

このうつうつ病性障害は、

  1. 大うつ病障害
  2. 小うつ病障害
  3. 気分変調障害

に分けることができます。また、うつ病の症状には次のような症状があります。

(1)強いうつ気分
(2)興味や喜びの喪失
(3)食欲の障害
(4)睡眠の障害
(5)精神運動の障害(制止または焦燥)
(6)疲れやすさ、気力の減退
(7)強い罪責感
(8)強い罪責感
(9)死への思い

このうち(1)強いうつ気分、(2)興味や喜びの喪失のどちらかを含む5つ以上の症状が該当する場合に大うつ病性障害と診断されます。

厚生労働省ホームページ

ここではうつ病の診断に用いられる症状について、さらに詳しい知識を持つように心掛けましょう。それぞれの症状を各印する際には次のようなチェックが行われています。

症状 医師の質問
うつ気分 「気持ちが沈み込んだり、憂うつになったりすることがありますか」
「悲しくなったり、落ち込んだりすることがありますか」
興味や喜びの喪失 「仕事や趣味など、普段楽しみにしていることに興味を感じられなくなっていますか」
「今まで好きだったことを、今でも同じように楽しくできていますか」
食欲の減退または増加 「いつもより食欲が落ちていますか」
「減量しようとしていないのに、体重が減っていますか」
「いつもよりずっと食欲が増えていませんか」
「食欲が非常に増進して、体重が増えていませんか」
睡眠障害(不眠または睡眠過多) 「睡眠の状態はいかがですか」(導入質問)
「ほとんど毎晩眠れないということがありますか。寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたり、非常に朝早く目が覚めたりしますか」
「眠気が強くて、毎日眠りすぎているということがありますか」
精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止) 「話し方や動作が普段より遅くなっていて、それを人から指摘されるということがありますか」
「じっとしていられず、動き回っていたり、じっと座っていられなかったりすることが多くなっていますか」
疲れやすさ・気力の減退 「いつもより疲れやすくなっているとか、気力が低下しているとか、感じることがありますか」
強い罪責感 「自分は価値のない人間だと感じたり、悪いことをしたと罪悪感を感じたりしていますか」
思考力や集中力の低下 「なかなか物事に集中できなくなっている、ということがありますか」
「普段より考えが遅くなったり、考えがまとまらなくなったりしていますか」
「普段なら問題なく決められることが、なかなか決められなくなっていますか」
自殺への思い 「死について何度も考えるようになっていますか」
「気分がひどく落ち込んで、自殺について考えるということがありますか」

あなたの会社でうつ病と診断を受けて休職をしている人たちはこのような症状に対して、「はい」と答えています。

医師からのこのような質問を踏まえた上で診断が「うつ病」の基準になっていることを覚えておくようにしましょう。

職場環境を整備する上ではうつ病の正しい認識がとても大切になります。

復職の環境整備でおさえるべき3つのポイント

うつ病の基本的な理解を踏まえた上で、うつ病からの復職で大切になる労務管理者の心得を知っておきましょう。うつ病からの復職は本人にも職場環境を整える労務管理者にとっても多くの注意が必要となります。

注意すべきポイントをきちんと意識した対応を心掛けるようにしましょう。

復職の可否は医師の診断書をベースに!

  • 「仕事に穴をあけてしまっている!」
  • 「他の人に迷惑がかかる!」

あるいは、

「メンタルの弱いやつだと思われたくない!」

など。

休職中の人たち自身も復職に際しては「焦り」や「不安」を感じることが多くあります。そんなときは職場全体でのフォロー体制が大切になりますが、本人の意思のみでの復職の判断は危険性が高いです。

復職の際には主治医の診断書をもとに復職の可否を判断するようにしましょう。その際にどのような薬を飲んでいたのか、休職中の本人の体調はどうだったのか、など休職中の環境を確認するようにしましょう。

医師に「復職」に関するアドバイスをもらおう!

主治医の復職判断については、復職をしたのちに、

  • どのような注意点があるのか?
  • どのような症状に特徴があったのか?

など、休職中の状況に加えて、復職に関するアドバイスももらうようにしましょう。うつ病で休職をしていた本人も医師のアドバイスが労務管理者に伝えれれていることが安心につながります。

一言にうつ病といっても重きを置く症状は様々です。どのような特徴を持っていたのかを知っておくことは職場環境の整備に効果的となります。

復職する人に寄り添った対応を心掛けよう!

医師に休職中のアドバイスをもらうことも、復職に関するアドバイスをもらうことも、すべては復職する人への最大限の配慮を行うための注意点となります。

休職中にどのような症状で苦しむ、復職へはどのような想いを持っていてどのような不安要素があるのかなど。すべての情報は復職する人に寄り添うための情報です。

多くの労務管理で「手が一杯で復職者の対応までできない」といったネガティブな想いを持つ人もいるでしょう。でも、うつ病はうつを発症した人だけの限定的な病気ではありません。労務管理をしているあなた自身にもうつ病になる可能性があります。あるいは他の社員がうつ病を発症することも考えられます。

うつ病の人に寄り添う気持ちを持つことで復職する人はもちろん、他のうつ病での休職者を出さないための予防的な労務管理を出来るようになるでしょう。

「試し出勤」の制度も確認しよう

試し出勤とはその名の通り、リハビリとして復職を希望する休職者に対してお試し出勤をしてもらい職場復帰の状況をチェックするという制度です。

「試し出勤」の種類

「試し出勤」には様々な種類がありますが、ここでは代表的な「試し出勤」について知っておきましょう。

「試し出勤」種類 内容
模擬出勤 極めて簡易な出勤の模擬となります。
出勤すべき時間に合せて、家を出ることで出勤するイメージを掴む作業となります。
出勤時間通りの時間に家を出ることでリズムを取り戻すことに狙いがあります。
そのため出勤時間に家を出れば目的地はカフェなどでも問題ありません。
慣らし出勤 実際に職場に出勤はしますが、短時間で仕事を切り上げます。
少しずつ勤務時間を延ばしながら元の時間に戻していく試し出勤となります。
通勤訓練 うつ病での休職者のなかには職場の近くまで行くと頭痛や吐き気を感じたり、決まった時間の電車に乗ろうとすると腹痛になったりなど様々な症状を持っている人がいます。そのため、家から職場までの経路を行き来することで精神を鳴らしていく作業が通勤訓練となります。職場に到着するまでに心身に症状を感じていた人にはオススメの方法となります。

「試し出勤」制度導入の際に注意すべきこと

このような「試し出勤」も積極的に導入することで復職を望む人たちは段階的に復職を目指すことができるため「試し出勤」を取り入れる企業は多くあります。

制度がある場合には積極的に「試し出勤」の制度を活用するように検討しましょう。うつ病での休職者から復職を希望する場合は「試し出勤」を活用することがオススメです。

ただし、企業が「試し出勤」制度を導入する場合は、

  • 勤務日数にカウントする前提で「試し出勤」を行うのか
  • 復職の希望があった際にとりあえずオススメするような形をとるのか

など、後々のトラブルにならないためにも、労働上の問題をクリアにしておくようにしましょう。

会社のルールとしての注意点はありますが、「試し出勤」ではうつ病での休職者一人ひとりの症状に合わせた制度活用が可能となります。リハビリ期間は復職を目指す人にとっての大きな安心につながることは間違いありません。

心理カウンセラー
ルールや制度による安心感は復職を目指すあなたの再発防止に効果を発揮してくれます!

まとめ

日本では精神疾患の患者数の増加に伴い、企業を取り巻く環境も確実に変化をしてきています。厚生労働省では50名以上の事業所にはストレスチェックを義務付けるなど、メンタルヘルスケアは企業の責任に位置づけられています。

精神論が日本を支え、日本を高度経済成長させた事実はあります。でも、明らかに時代は変化と進化を続けています。

働いている人たちは自分の心の健康にもっと強く目を向けるようにしましょう。

労務管理をする人たちは労働者の職場環境に重きを置く必要性を認識しましょう。

日本を取り巻くメンタルヘルスの状況は変化しているからこそ、その変化に柔軟に対応できるようにしましょう。

心理カウンセラー
うつ病は本人の甘えだ!と言い切れる時代ではありません!

良くも悪くも、うつ病が甘えだという言葉で片付く時代は終わりを迎えています。働く人たちはうつ病で休職をしてしまわないようにストレス対応を心掛け、労務を管理する人たちは今まで以上に働く人たちの安全配慮を心掛けるようにしましょう。

厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年1月現在)」によれば長期休業を余儀なくされている人は43万人をこえています。そして、最近では精神疾患による労災認定も着実に増えていることもあり、GTLD(団体長期障害所得補償保険)に加入する企業も増えています。

いずれにせよ、精神疾患・うつ病による休職するケースも決して特別ではなく今後増加すると考えられるケースであることを働く人も働く環境を整備する人たちもきちんと理解をして、可能な限りうつ病による休職者を出さないような対応を取るように心掛けましょう。

そして、あなたがうつ病で休職中であったとしても、うつ病の再発率は約60%であるということを念頭に置き、くれぐれも焦らずに復職を目指すようにしましょう。

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