カウンセリングと言えば「心理カウンセラー」の先生が行う仕事でしたが、心理カウンセラーとは一体何者!?なのでしょうか?
日本にはこれまで、心理職を専門とする国家資格は存在していませんでした。最も信頼性が高いとされる「臨床心理士」という資格も、実は民間の資格だったことをご存知でしょうか?つまり、心理カウンセリングを行っている最も信頼性の高い資格であった臨床心理士でさえ、民間の資格であり国家資格ではありませんでした。
ただ、いよいよスタートする公認心理師という国家資格により、社会における心理カウンセリングの位置づけは大きく変わる可能性があります。今後、皆さんがカウンセリングを受ける上で、心理カウンセラーを選択する上で、そのカウンセラーの先生が「公認心理師」資格を保有しているか否かは、大きなポイントになるでしょう。
カウンセラー選びの大きなポイントになるであろう公認心理師という資格がどのような資格なのかについて、ここでは公認心理師法に基づきながら解説してみたいと思います。
公認心理師法について
公認心理師について、厚生労働省のホームページでは次のように紹介されています。
公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。
- 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
- 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
※厚生労働省ホームページより
つまり、心理カウンセリングなどの心理的な援助が必要な人のココロの観察や分析、相談や援助、そして心理的な援助が必要な人の周囲の人たちへの助言や指導などを行う国家資格とされている、という解釈で概ね良いのではないでしょうか。
国家資格になる、ということは法律による明確な定義づけがされることとなります。これは今後心理カウンセリングが確固たる地位を築いていく上では、非常に大切な要素だと感じています。その定義づけをしている公認心理師についてご紹介します。
心理カウンセリングがどのような定義づけをされているのか、興味のある人は読んでみてください。
「第一章 総則」を見てみよう
第一条(目的)
この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適性を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。
先ずは「目的」についてですが、まさに日本の国民のココロの健康を保持増進することにその目的があるわけです。つまり、ココロの健康に関するスペシャリストが公認心理師である、ということが定義されていることが分かります。
第二条(定義)
この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて保健医療、福祉、教育その他の分野において心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者を言う。
一、心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二、心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三、心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四、心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
定義については厚生労働省のホームページにも掲載されていましたが、この「定義づけ」は皆さんにカウンセリングを理解してもらう上でのガイドラインになるモノです。公認心理師という仕事がどのような定義づけをされているのかを理解することは、カウンセリングに求めている内容があるのか、あるいはないのかを理解する上では重要な要素になります。ここの定義づけでは少なくとも「心理に関する支援を要する者」の心理状態の観察や分析、助言や指導を行うという定義づけがされています。
つまり、今までは心理カウンセリングという曖昧だった要素が明確に定義づけられた、ということになります。
第三条(欠落事項)
次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
一、成年後見人または被保佐人
二、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して、二年を経過しない者
三、この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
四、第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取り消しの日から起算して二年を経過しない者
ここでは、信用失墜禁止違反や秘密保持義務違反に関する定義もされています。つまり、クライアントの秘密保持等においても法律として明確な規定がされているということになります。
これらの内容は民間の資格では、罰則にまで踏み込んだ規定をすることは難しいでしょう。この罰則の規定等からは、国家資格であることの「安心感」を感じることが出来るのではないでしょうか?
「第一章 総則」のまとめ
この総則で、心理カウンセラーのやるべき業務の内容も明確化されていると思います。
カウンセリングという「何か分かりづらい」ものから、きちんとした「定義づけがされる」ことはとても価値のあることだと思います。
ただ、一つポイントになることはこの定義づけられた内容を、例えば臨床心理士が仕事として行うことは可能だということです。公認心理師という資格はあくまでも「名称独占」であり、例えば医師や看護師、弁護士といった資格のような「業務独占」の資格ではないということです。
どういうこと?と思われる人もいるでしょう。
簡単に説明すると、公認心理師であろうと臨床心理士であろうと業務内容は同じである、ということは実際にあるということです。公認心理師だからこれができる!というような業務に関わる内容が定義されているわけではないということは覚えておいてください。
まとめ
皆さんが心理カウンセラー選ぶ時に、これまでに重視していた項目が多くあると思います。
どこにカウンセリングオフィスがあるのか?
どんなキャリアを持っているのか?
どんな領域や療法に強いのか?
どんなウェブサイトを作っているのか?
などなど、色々な条件をカウンセラーを選定する上での要素としていたと思うのですが、これからは恐らく最初に公認心理師を持っているのかどうかが、最初のフィルターになっていくのでしょう。
もちろん資格そのものがカウンセリングの品質を担保するわけではないでしょう。それでも国家資格を持っているということでの安心感は、例えば公認心理師の「秘密保持義務」という点を見ても明らかだと思います。
秘密が外に漏れることなく、安心して話しを出来るかどうかは相談をする上での大きなポイントになるでしょう。クライアントが公認心理師の先生に「なぜ安心して話しができるのか?」については下の記事を参考にしてもらえたらと思います。
参考記事:カウンセラーとしての公認心理師を解説2