カウンセリングと言えば「心理カウンセラー」の先生が行う仕事でしたが、心理カウンセラーとは一体何者!?なのでしょうか?
日本ではこれまで、心理に関する国家資格は存在していませんでした。最も信頼性が高いとされる「臨床心理士」という資格も、実は民間の資格だったことをご存知でしょうか?つまり、心理カウンセリングを行っている最も信頼性の高い資格であった臨床心理士でさえ、民間の資格であり国家資格ではありませんでした。
ただ、いよいよスタートする公認心理師という国家資格により、心理カウンセリングの位置づけは大きく変わる可能性があります。今後、皆さんがカウンセリングを受ける上で、心理カウンセラーを選択する上で、そのカウンセラーの先生が「公認心理師」資格を保有しているか否かは、大きなポイントになるでしょう。
カウンセラー選びの大きなポイントになるであろう公認心理師という資格がどのような資格なのかについて、ここでは公認心理師法に基づきながら解説してみたいと思います。
公認心理師法について
公認心理師の総則については、ご紹介しました。
参考記事:カウンセラーとしての公認心理師を解説1
心理職初の国家資格である公認心理師が誕生することにより、クライアントはカウンセラー選びに新たなフィルターを持つことができるようになり、同時に国家資格という安心感を持つことが出来るようになるのではないかと思います。
ここでは、特に「安心感」というキーワードを中心に記載しいたいと思います。
クライアントはどのような安心感を持って良いものなのでしょうか。その安心感について、ここでは、公認心理師法の第四章「義務等」、第五章「罰則」の条文から見てみたいと思います。
心理カウンセリングが公認心理師法により、どのような定義づけをされ、クライアントにとってどのような利点があるのか、条文から解釈してみたいと思うので、興味のある人はぜひ読んでみてください。
※あくまでもウェルビー・ココロ研究チームの展望となります。
「第四章 義務等」を見てみよう
第四十条 (信用失墜行為の禁止)
公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
これは民間の資格であっても同様だと思いますが、やはりその資格の信用を失墜するような行為をしてはいけないという「信用失墜行為」の禁止が条文に盛り込まれています。初めて誕生する資格であり、まだ信用も何もありませんが、この資格で仕事をする人たちが今後増えるでしょう。そして、この資格で仕事をする人たちが増えるということは、この資格にココロが救われる人たちが増えるということです。今後この資格に救われる人たちのためにも、資格の信用を失墜する行為は当然禁止されるべきですね。
第四十一条 (秘密保持義務)
公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
この秘密保持については、クライアントの「安心感」に直結するとても大事な義務になります。自分自身の、なかなか人には話せない内面を打ち明ける場面で、その情報がきちんと保護されていると感じれるかどうかについては、クライアントが話しをする上で、とても大切な要素になります。もし、秘密保持が約束されていないとしたら、自分自身のことを赤裸々に語ることはないでしょう。ココロの健康を扱うということはそれだけ情報については神経を使わなければいけないということでしょう。
また、ここについては、「罰則」の欄でも登場しますが、秘密保持義務の義務違反には罰則もあります。それだけ秘密を保持することがクライアントにとっても大切である、ということを示唆しているのでしょう。
第四十二条 (連携等)
公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
ここでは特に「2」についての注意になりますが、クライアントに当該支援≒心理的な援助に関わる主治の医師がいる時には、公認心理師は医師の指示を受けることが必要になるわけです。ここについては、カウンセラーももちろん注意が必要になりますが、クライアントの人たちにも、公認心理師のカウンセリング等を受ける際には「主治の医師がいることは伝えなければならない」ということを知っておいてもらえたらトラブルを回避できそうですね。
第四十三条 (資質向上の責務)
公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
これはどのような専門職にも共通している内容になると思います。専門職として業務に従事する以上は、やはり自己研鑽に努めることがクライアントの利益にも直結すると考えられます。知識や技術を提供する以上は、環境の変化に適応的に機能できるよう、心理の援助者自身でもある公認心理師が資質を向上するための努力は必要になると思います。
第四十四条 (名称の使用制限)
公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。
2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。
ここは、「カウンセラーとしての公認心理師を解説1」のまとめでも記載した通り、心理師という名称独占に関する内容となります。言い換えれば名称の使用には制限がかかっていることを定義した条文になっていますね。名称独占の国家資格、あまり聞きなれない印象ですが、公認心理師、心理師というワードは他では活用できないことを明記しています。
「第五章 罰則」を見てみよう
第四十六条
第四十一条の規定(秘密保持義務)に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
先ほども記載しましたが、この「秘密保持義務」については、明確な罰則「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が設けられています。法律を評価するのは烏滸がましいですが、秘密が保持されることはクライアントからしても安心して話しをする上での絶対条件になるので、大切な義務であり罰則であると思います。
国家資格である公認心理師自体がカウンセリングの質を担保するわけではないです。但し、この資格によって秘密保持がきちんとされているんだという印象を持つことが出来るだけでもカウンセリングが少しでも身近なモノになるきっかけになれば、それはとても良いことだと感じます。
第四十七条 / 第四十八条
試験実施機関の役員や職員に対する罰則の記載になるため、割愛します。
第四十九条
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条第二項の規定により公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、公認心理師の名称を使用し、又はその名称中に心理師という文字を用いたもの
二 第四十四条第一項又は第二項の規定に違反した者
ここでは名称についても守られていることが分かります。10年、20年と経った時に、この名称の価値は自ずと出てきていると思うので、名称の保護は必要なくなっているかもしれませんね。そういった確固たる資格に育っていくよう、現場で業務に従事する人たちは、クライアントに信頼をしてもらえるような確かな心理的援助を提供していく必要があるでしょう。
まとめ
クライアントがカウンセラー(=公認心理師)に話しをする上で、「秘密保持義務」が法律に明記されていることは確実に「安心」につながると思います。秘密が外に漏れることなく、安心して話しを出来るかどうかは、内面を見せる上では大きなポイントととなります。
もちろん、これまで民間の資格で心理に携わってきている先生たちも秘密保持、守秘義務についてはクライアントの皆さんにきちんと伝えていたことでしょう。ただ、それが国家資格での保証になることは、何よりクライアントにって心強いでしょう。
また、カウンセリングで大切になるラポール、信頼関係の構築にも大きく影響を及ぼすことになるでしょう。信頼を築くための要素として心理職初の国家資格は非常に価値があると言えるでしょう。
ただ、試験となれば受かる人もいれば落ちる人もいるでしょう。転じて解釈をすると試験に落ちた人は信頼がない、という事態につながり兼ねないですね。いま心理カウンセラーとして仕事をしている人にとっては試験の合否は生活そのものに影響することとなります。
いずれにせよ、この心理職初の国家資格である公認心理師が社会でどのようなポジションを確立していくのか、築いていくのかについては、実に興味深いです。