加速するデジタル社会のなかで、若者のつながりはSNS上にシフトしています。
確かに簡単に連絡が取れたり、他人のいまを簡単に知れることは便利ですよね。でも、この利便性は「表裏一体」です。
そんな表裏一体の「裏」の部分がいま、若者を中心に頻発しています。それが「人間関係リセット症候群」です。
人間関係リセット症候群とは…症候群と呼ばれているが、正式な「病名」ではない。何らかのトリガーによって、衝動的に人間関係を断絶してしまう心理状態や実際の行動を意味する造語
SNS(LINE、X(旧ツイッター)、インスタなど)上で、
- アカウントを突然削除してしまう
- 連絡先を突然削除してしまう
あるいは実社会においても、
- 突然、会社に来なくなってしまう(休職)
- 突然、会社を辞める(転職)
など。突発的に関係性を断ち切る行動が若者に増えています。
この記事では、
人間関係リセット症候群とは何か?
人間関係リセット症候群の人がとる象徴的な行動とは?
人間関係リセット症候群におちいりやすい人の心理
人間関係リセット症候群、その衝動を止める方法とは?
について詳しくお伝えします。
人間関係リセット症候群とは何か?
人間関係リセット症候群とは、何らかのトリガーによって、衝動的に人間関係を断絶してしまう心理状態や実際の行動を意味する造語です。
人間関係リセット症候群は造語であるため、「症候群=シンドローム」と表記があるものの病気ではありません。ただ、不安障害や境界性人格障害、ADHDなどの精神疾患との関連を指摘する医師もいます。
一方である「性格的」な特徴を持っていると、人間関係リセット症候群におちいりやすいです。それが、HSPです。
人間関係リセット症候群におちいりやすい「HSP」ってどんな人?
HSPとは…「“H”ighly “S”ensitive “P”erson」の頭をとってHSP。つまり、繊細すぎるあるいは過敏すぎる性格を持つ人のことを指す。
つまり、周囲の人に言われる内容や事柄に「過敏すぎる反応を示す」人や周囲への自分の発言に対しても「必要以上に考え込んでしまう」人のことを指します。この過敏な反応が脳と心を疲弊させていき、結果的にすべてをリセットしたいと思うようになります。
このような人はやはり人間関係リセット症候群におちいりやすいと言えます。
人間関係リセット症候群は現代病なのか?
「昔」も一定の人は人間関係リセット症候群の状態になっていたことでしょう。
ただ、いまほどに「人」と「人」の関係性が視認できる時代ではありません。現代は人間関係が「視認できる」ツールに溢れている時代だからこそ、「リセット」を行うと顕著にその状態を周囲が理解できることから、いまこの時代に「人間関係リセット症候群」という造語が出来たと類推できます。
昔から、職場に突然現れなくなったり、突然転職する人たちは一定数はいたと判断できます。ただし、昔はあくまでも「人」と「人」との関係性が視認できなかったため、その行動が顕著に浮彫にはならなかっただけしょう。
昔は自分自身の友人の数が示されているツールなどはありませんでした。そして、人間関係をリセットしたいと思っても、インターネット上ではない、リアルなつながりだったからこそ、簡単にリセットという行動ができなかったのでしょう。
人間関係リセット症候群の人がとる象徴的な行動とは?
人間関係リセット症候群の人たちが取る行動は大きく2分類が可能です。一つ目はインターネット上でのアクション、2つ目は実社会でのアクションです。
人間関係リセット症候群の人がインターネット上で取る行動は?
SNSの友達を削除
SNS上での特定に人(複数人)との関係性の悪化が原因で、
- すべてが嫌になった
- すべてが上手くいかなくなった
という想い込み、被害妄想のような思い込みと衝動で、突然すべての友達を削除します。
友達から受けたネガティブな事柄が周囲のすべての人が「敵のように感じ」、周囲に嫌悪感を抱いてしまうために生じる行動になります。
SNSのアカウント自体を削除
こちらも同じく、
- すべてが嫌になった
- すべてが上手くいかなくなった
という想い込みから人間関係リセット症候群におちいりますが、こちらは友達を削除することだけではな「気持ちが整理できない」と判断した場合に、自らの存在を消すようにアカウントのすべてを削除してしまう行動です。
「SNS上の友達の削除」とは異なり、周囲をリセットしたいというよりは自分自身の存在を消したい」、そんな想いを抱いたときに起こしてしまう行動です。
人間関係リセット症候群の人が実社会で取る行動は?
転職を繰り返す
一般的には、
- 学生の人は多くの時間を学校で過ごす
- 社会人の人は多くの時間を会社で過ごす
ものです。学生は簡単に転校することはできませんが、社会人は「転職」という方法で簡単に居場所を変更することができます。つまり、転職は生活をがらっと変える切り札とも言えます。
そんな切り札を使いまくっている人は人間関係リセット症候群の特徴的な行動を取っている人だと言えます。
「転職」では、「いまの職場の人間関係に疲れた」という消極的な理由が常に上位にランキングしています。つまり、いま現在置かれている環境を変えることで全てを変えようとしているわけです。ただ、行く先々で上手くいかなくなると転職するため、気づけば転職を繰り返してしまいます。
意図的に音信不通になる
最近ではほとんどの人が連絡をLINEで取り合います。そのLINEで「メッセージを送ってもまったく既読にならない」といった人が周囲に一人はいるのではないでしょうか?
つい最近までは連絡が取れていたのに突然、既読にならないという人は音信不通の状態を自ら選択している人だと言えます。
孤立無縁になれる環境に身を置くことで、あるいはLINEを既読にしないことで、周囲と距離を置いているというメッセージを発信していることになります。
人間関係リセット症候群におちいりやすい人の心理5選
人間関係リセット症候群におちいりやすい人には共通の特徴や心理があります。それが、
- 悲観的、ネガティブ思考に入りやすい
- 完ぺき主義者
- 一人で考え込む
- 次は上手くいくと“錯覚”を起こしている
- 生活習慣が大きく乱れている
これらの心理です。
悲観的、ネガティブ思考に入りやすい
いつも身の回りの出来事をを悲観的に捉えている人、ネガティブ思考がいつも優勢の人は人間関係リセット症候群におちいりやすい人と言えます。
ネガティブ思考の人は、認知のバイアスに歪みがあるため、身の回りでたとえ良いことが起きてもダメなことにように解釈してしまうものです。
そんなネガティブ思考は生活に悪影響を及ぼし、「結局私なんて…」とすべてを悲観的な感情へと誘ってしまいます。その結果、すべてが嫌になり世界を遮断する気持ちでリセットボタンを押してしまいます。
完璧主義者
完璧主義的な傾向を持っていること自体は決して悪いことではありません。むしろ仕事などでは完璧主義的な傾向で挑むことで大きな成果を上げることができます。
ただし、完璧主義的な傾向が大切なのであって、完璧主義が大切ではありません。微妙なニュアンスですが大きく異なります。
- 完璧主義的傾向の人は完璧に近づける努力をする人
- 完璧主義者は「完璧であることこそ正義」だと思っている人
です。つまり完璧主義者は「完璧ではない物事」に嫌悪感を抱くいます。完璧にこなしたい気持ちを否定はしませんが、特に人間関係などは対人関係の上に成立するものです。
人間は自分自身の気持ちの変化でさえも完璧に把握することは困難です。ましてや他人の気持ちの変化を完璧に把握すことは、残念ながら不可能です。
相手も「人」である以上、人間関係は「不完全な状態こそが完璧な状態」である
くらいの気持ちで考える「ゆとり」が必要になるでしょう。
一人で考え込む
一人で考え込む、つまり、
- 他人に相談できない
- 相談できる相手がいない
そんな人は人間関係リセット症候群におちいりやすい人です。
人は自分自身の感情を他人に伝える過程で気持ちの整理をするものです。言い換えれば、人は誰かに気持ちを伝えようと自分自身の気持ちを言語化することで感情の整理ができます。
でも、相談相手がいない場合は、「感情の明確な言語化」が行われないため、感情の整理は上手くいかないものです。感情を自分でかみ砕こうとする過程で「一人で悩み、考え込み、“悩み”をより深く複雑なモノにしてしまう」のです。
一人で感情を整理できないと思うときは、誰かに相談する癖をつけるようにしましょう。ただし、過去に親しい友人に裏切られた経験などで人を信用できないときは、「考えない」ために旅行に行くなど一時的な環境の変化を生じさせることで疑似的リセットを行い、感情と深く向き合わないようにする努力が必要になります。
生活習慣が大きく乱れている
人のココロの安定をつかさどっているモノに、睡眠と食事があります。特に睡眠は人のココロの安定に顕著に表れます。
睡眠不足が続くと、カラダは明らかな疲れを感じ、すぐにイライラしてしまうなどココロの不安定化を加速させます。また、正確な統計はありませんが、SNSの削除などは深夜に行われることが多いと類推できます。
寝不足で正常な判断ができなくなっていたり、夜更かしばかりをしていると、健全な精神状態は保てません。睡眠不足や「夜型」人間になると判断がにぶってしまう結果、思わず人間関係リセット症候群におちいる行動、アカウントの削除=リセットボタンを押してしまうこともあるでしょう。
不規則な生活は着実にあなたの正常な判断を鈍らせていくものです。寝る前の1時間は携帯を触らないなどして「睡眠の質」を上げる努力をしましょう。精神の安定に向けたアクションを自ら作り出すことも大切になります。
次は上手くいくと“錯覚”を起こしている
この“錯覚”こそがすべての行動に原点になっている可能性が高いです。
人間関係リセット症候群の人たちが人間関係をリセットした先に、「上手くいっている未来」を勝手に作り上げてしまっていることは非常に多いです。
周囲の人間関係をリセットすることで、次は上手くいく“はず”だ!
少し厳しい表現になりますが、これは「単なる未来への錯覚」です。あなた自身に変化が起きていない以上、歴史は繰り返します。
人間関係リセット症候群、その衝動を止める方法とは?
リセットボタンを押すことをやめる方法は「思考を変える」ことと「行動」を変えることです。
人間関係リセット症候群をやめる方法:思考を変える
人間関係リセット症候群の人が「リセットボタンを押す」瞬間は現状が「嫌で嫌でたまらない」という悲観の気持ちに溢れていることは間違いありません。
ただし、先ほどもお伝えした通り、その深層心理には「次は上手くいく」という錯覚、幻想が潜んでいます。
いま上手くいっていない現状がある
↓
これは周囲の人たちに責任があるのでは?
↓
つまり、自分は悪くない?
↓
そうか!周囲をリセットすれば変わかも?
↓
次は、きっと上手くいく!
これは幻想、錯覚です。あなた自身の深層心理で描かれている「未来予想図」はあくまでも幻想、錯覚であることがほとんどです。
そして、何よりリセットボタンを押すことで本当にあなたを助けてくれている人たちとも関係性を断つことになります。状況はますます悪くなってしまうと同時に「次は!次こそは!」と幻想と錯覚に取りつかれるようになり、リセットへの罪悪感もほとんどなくなってしまいます。
人間関係リセット症候群をやめる方法:行動を変える
「思考を変える」ことが出来ればそんな苦労はしていない、という気持ちになる人もいるでしょう。そんな人たちには「行動を変える」ことをおススメします。
思考を変えるためには行動を変える。
行動を変えることであなた感じる刺激に変化が生じます。その新たな刺激があなたの思考を変えるトリガーになります。
人間関係リセット症候群が生じる前に「一人旅≒疑似リセット」という公式を頭に叩き込みましょう。一人で知らな場所に気の向くままに旅をしてみることはあなたのプラスに働くはずです。
少しだけでも日常を離れることで気持ちにもわずかでも変化が生じるはずです。その変化こそがリフレッシュでありリセットにも似た感情になります。
一度「日常を離れる」と日常に戻るのが辛いかもしれません。でも本当に人間関係をすべてリセットするよりも疑似的にリセットを行うことの方が未来はきっと楽なモノになります。
「逃げ出したい」気持ちを人間関係のリセットに体現するのではなく、旅行という一時的な回避で終わらせることを繰り返しながらでも、少しずつ現状に適応できる自分なりのスタイルを身につけていきましょう。
「人間関係リセット症候群は癖になる」のまとめ
ここでは人間関係リセット症候群の人の象徴的な行動や人間関係リセット症候群におちいりやすい人の心理について紹介しました。
もしかするとごく一握りの人は人間関係をリセットすることで人生が好転することもあるでしょう。でも、ほとんどの人は、
- 「次こそは!」
- 「次は大丈夫!」
と何度もリセットを繰り返すことになっていくでしょう。
ただ、人間関係のリセットを繰り返しても結局は「自分自身の気持ちのリセット」をしない限りは、同じような状況におちいってしまうものです。
そして、人間関係をリセットするということは「あなたを助けてくれている人」までもリセットしてしまうことになります。長く関係を続けることで初めて見てくる人の「良し悪し」は存在するものです。ちょっとダメだから「これはダメだ」と決めつけるのではなく、将来的な視点を持ちましょう。
「人間関係をリセットしたい」と思ったときは、一呼吸おいて将来的な視点を持つとともに、もう少しだけ自分自身にやり残したことがないのかを自分自身で確認する作業をしてみましょう。
良好な人間関係を築くには時間を要することは事実です。でも、時間がかかって構築された人間関係こそ、「本当の人間関係」です。
特にSNSをリセットしたいと感じたときはデジタルデドックスを行い、インターネット上のつながりに意図的に距離を置くようにしましょう。
冷静になれば、