皆さんはコミュニケーションと聞いた時に最初に何を思い浮かべるでしょうか?
コミュニケーションには「話す」ことも「聴く」ことも含まれます。あるいはコミュニケーションを2つに分ける時には「非言語コミュニケーション」と「言語コミュニケーション」という分け方をする場合もあるでしょう。
ここでは、コミュニケーション、特に会話の内容に絞り、コミュニケーションを「自己開示」と「自己呈示」に分けてお伝えします。
人間関係では時に「人の発言にイラっとくる」ことも多いと思います。では、そのイライラの原因は何なのでしょうか?会話に潜む法則を「自己開示」と「自己呈示」から確認してみましょう。
「自己開示」を理解しよう!
自己開示とは、文字通り自分自身を開示することを指し、「自分についての情報を言語を介して特定の相手に伝達する」ことを言います。つまり、ありのままの自分をさらけ出すことを言います。この自己開示は誰かと信頼関係を築く上ではとても大切な考え方になります。誰かと信頼を築きたい時は「自己開示」が必要になることを覚えておいてください。
開示の広さや深さを考えよう
例えば、話し相手から「秘密の話し」を聞いたとします。あなたはどのように感じるでしょうか?それが本当に秘密にしてきたんだと感じる情報だった場合、きっとあなたは自分自身を信頼してくれているから秘密を打ち明けてくれたと感じるでしょう。
この開示の広さや深さがコミュニケーションから信頼関係が生まれていくカギになっていきます。普段何気なく話している内容で、あなた自身が会話で開示している内容の広さや深さ、あるいはあなた自身が誰かからの会話で聴いている開示の広さや深さを一度意識してみてください。あなたへの「信頼」が見えてくると思います。
返報性の規範
自己開示のコミュニケーションでは、とても大切になる概念に「返報性の規範」というモノがあります。返報性の規範における返報性は、互恵性や相互性と言われることもあります。
相手から何かをもらった場合には、それらと同等のモノを返すべきであるというような社会的なルールのようなものと考えてもらえればと思います。例えば、AさんがBさんに対して、恋人との過去の話しをした場合に、Bさんも自然に恋人との過去の話しをしたりします。これはAさんとBさんの間に社会的なルールが働き、情報の均衡性を意識して、自然と話すようになるという「返報性の規範」が働いている会話での一場面となります。
つまり、会話で人と人が関係性を築いていく場合には、自己開示が必要になり、その開示には広さと深さが関係するということを覚えておいてください。
「自己呈示」を理解しよう!
自己呈示とは、印象操作のコミュニケーションと言われます。「自分は○○な人間だ」とみられるために、「○○」であるかのような話しをしている時は自己呈示のコミュニケーションということになります。この印象操作をする自己呈示のコミュニケーションは、特に初対面などではとても大切なコミュニケーションになります。印象を操作したい時は「自己呈示」が必要になるということを覚えておいてください。
印象操作とも言われる自己呈示のコミュニケーションには4つの分類があります。4つの分類には「戦術的で防衛的」「戦術的で主張的」「戦略的で防衛的」「戦略的で主張的」というものがります。
戦術的とは?
特定の対人場面で一時的に行われるものとされています。
戦略的とは?
長期にわたってある特定の印象操作を他者に与えようとするものとされています。
防衛的とは?
他者に悪い印象を与えそうな場合にそれを防ぐためのものとされています。
主張的とは?
特定の印象を与えるために積極的に行うものとされています。
ストレスになるコミュニケーションは「戦術的で主張的」
特にストレスに関連するコミュニケーションで注意しなければならない領域は「戦術的で主張的」な部分となります。つまり、特定の対人場面に一時的に行われるもので特定の印象を与えるために積極的に行うコミュニケーションです。特定の場面であなたにストレスを与えてきている人のコミュニケーションは、次に出てくる「自己宣伝」や「威嚇」、「哀願」に該当しないでしょうか?
コミュニケーションは、漠然とした会話で捉えずに、細かく捉えれるようになることでコミュニケーションに潜むストレスの原因をつかむことはできるでしょう。
取り入れ
基本的に私たちは他者に好かれたいという神話欲求を持っています。この取り入れとは、他者から好意的な評価を得るために行われる自己呈示となります。
「なぜこのような大切な話しをわざわざ私に伝えてくれるのだろう?」という感想をコミュニケーションのなかで抱いた場合に行われていることが多いです。「情報をコントロール」することで対人関係の距離を近づける意図がある場合に、このような疑問を抱いたりすることがあります。
自己宣伝
文字通り、自分自身の能力の高さを示そうとする自己呈示となります。
これは説明しなくても、多くの人がストレスを感じたことがあるコミュニケーションだと思います。簡単に言うと。自慢話しのようなコミュニケーションですね。「私は○○を持っている」や「私○○と知り合いだ」などという自分自身のPRをする場面でのコミュニケーションになります。誰でも一度はイラっときたことがあるコミュニケーションだと思います。
示範
道徳的に高い価値を持つことを示そうとする自己呈示ということになります。
これは直接的なストレスになりにくいかもしれませんが、ストレスを感じたことがある人もいるでしょう。例えば会社の上司が、やたらに道徳的な部分にうるさいにも関わらず、その人自身にはほころびが多くあると感じた時などはストレスになり得ますね。
威嚇
自分の命令に従わない人間に対して罰を与える能力と意図を持っていることを示そうとする自己呈示ということになります。
例えば、会社の上司が罰を与えてくるのではなく、「あなたを○○することはできるけど」といったように罰を与える意図を持って話しをしてきたりすると当然ながら強いストレスを感じることとなります。威嚇がストレスになることは皆さんも見当がつくかと思いますが、この「威嚇」というコミュニケーションが、話し手が意図して話しをしている自己呈示の文脈で行われているということを覚えておいてください。単純に威嚇を受けていることにストレスを感じているのではなく、罰を与えるような意図したコミュニケーションにストレスを感じているわけです。
哀願
他者から援助や養育などを引っ張り出すために、自分自身が弱い存在であることを印象付けようとする自己呈示ということになります。
哀願は本当に弱いのか、それとも弱いふりをしているのか等、少し線引きが難しいコミュニケーションになります。それでもこの哀願というコミュニケーションにもほとんどの人はストレスを感じた経験しがあるでしょう。自分自身が弱いふりをして、援助を引き出すような場面では会社や学校などでもよく見受けられる光景です。
例えば会社などで風邪を引いてしんどい人は「私は今日体調が良くないから仕事手伝って欲しい」と素直に言うのではなく、事あるごとにしんどいことをアピールすようなコメントやしぐさをします。その意図されたコミュニケーションに人は多くのストレスを感じるのです。
「自己開示」と「自己呈示」の決定的な違いを解説
同じコミュニケーションでも、自己開示と自己呈示には大きな違いがあることが分かってもらえたでしょうか。そして、この2つは同じコミュニケーションという言葉でまとめられているわけですが、それぞれに決定的な違いを持っています。
人間関係を築きたい時は自己開示にこだわろう
「人」と「人」が信頼を築いていく上で、あなたは何を基準にその人と仲が良いのかどうかを図っていますでしょうか?もしその尺度が曖昧なのだとしたら、今後はその人に対して持つ「情報量」を一つの尺度にしてみてください。相手が自分について知っていることと相手のこととの情報量が多く、かつ情報の広さや深さが共通している時は相手との関係性が成立していると考えて良いでしょう。
また、今後誰かと関係性を築いていきたいと考えている時は自分自身のことを伝えるようにしましょう。同等の情報が相手から返ってくるかを確かめながらコミュニケーションを取ることでより良い関係性を築くことが出来るようになるでしょう。
ただ、自分は自己開示をしているのに同等の情報が返ってこなかったり、返ってきている情報に偽りの情報があったりすると、とても大きなストレスになることがあるので、自己開示については、慎重に行うようにしましょう。
ストレスの多くは自己呈示にある
中長期的な関係を誰かと築いていく上では、自己開示が必要になります。一方で短期的な関係性の場合は自己呈示が必要になるのですが、この自己呈示にはストレスになる要因が非常に多いのです。
例えば、「哀願」を例にとった場合、職場で「今日私体調が良くなくて、、、」と言ってる人がいます。この体調の悪さが本当だった場合、人は何のストレスも感じませんが、体調が良くないことで仕事の量を減らして欲しいなどのメッセージが込められている場合は、とてもストレスに感じてしまいませんか?
あるいは「威嚇」を例にとってみた場合、職場であなたが失敗をしてしまった時に上司から「今日中に何とかしないと明日からあなたの居場所はないよ」というような言い方をされた時に当然のようにストレスを感じることでしょう。
このように印象操作のコミュニケーションは使い方を間違えなければ、特定の場面で関係を築く武器になりますが、人のコミュニケーションに感じるストレスの多くには自己呈示という印象操作が入っていることを覚えておきましょう。
まとめ
ストレスから解放されるカギは、ストレスの原因を理解しておくことです。
漠然と感じたストレスを感じる「人」の発言。その発言にはストレスになる原因が潜んでいます。メッセージの送り手の意図を冷静に判断することが出来れば、今まで感じていたストレスから自分をわずかであっても解放することが出来ます。
そのポイントはメッセージの送り手が放っている内容は「開示なのか」、「呈示なのか」の見極めです。
人間関係を築きたいと感じてくれている人にはきちんとあなた自身も関係性を築きたいと考えている内容のメッセージを返し、印象操作を行ってくる人には警戒をするなど、メッセージの内容をきちんとくみ取ることで人間関係のトラブルの多くは未然に防ぐことが可能となります。
そして、あなた自身もコミュニケーションを取る時にどのような癖を持っているのか、自分自身を注意深く観察するようにしましょう。