最近では、
- 子どもに対して自己肯定感の高い、あるいは低い
- 部下に対して自己肯定感が高い、あるいは低い
など。
自己肯定感というキーワードからその人物へアプローチすることが増えました。そして、
- 失敗を恐れる
- ミスを怖がる
- 何事にも消極的
などの行動には「自己肯定感が関係する」と判断されるようにもなってきています。でも、このような否定的な行動も「自己肯定感を高める」ことで変化するとされています。
この記事ではそもそも論である「自己肯定感」の定義について紹介しています。その上で、自己肯定感の低い人に見られる特徴や原因を紹介します。さらに、自己肯定感を高める5つの方法についても紹介します。
自己肯定感とは何か?
自己肯定感とは?そんな質問をされたときに的確に答えれる人は実はあまり多くありません。多くの人は自己肯定感、つまり「自己」を「肯定する」力といった具合に捉えているでしょう。
決して間違いではありませんが、ここでは少し掘り下げて見ていきましょう。
自己肯定感に「自己肯定化」からアプローチ
自己肯定感を示すときに切っても切り離せない概念が自己肯定化になります。
自己肯定化とは…スティールによって提唱された概念で、全体的な自己の統合性を肯定・確認する過程。自分が環境に適応し、倫理的に適切な行動をとっており、有能である、といった統合された安定的なイメージ(現象的自己の経験)を維持しようとする自己システムの存在を前提としている。
そして、特定の自己概念が脅威にさらされると、その特定の自己概念を直接的に防衛するのではなく、より広範で全体的な自己の統合性を肯定・確認することで脅威に対処すると考える。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
つまり、「自己肯定化」とは自分自身の感情が脅威にさらされたときに、自分自身の感情を部分的に守るのではなく包括的に自分自身の感情を守ろうとする概念になります。
この「自己肯定化」から自己肯定感を、もう少しかみ砕くアプローチを行うと次のように解釈できるでしょう。
自己肯定感が高い人:“包括的に”自分自身の感情を守るための言動や行動が多い
→否定を認識した上でも、脅威を感じる状況に対して「肯定に変換する」力が強ければ強いほど自己肯定感は高い
自己肯定感が低い人:“包括的に”自分自身の感情を守るための言動や行動が見られない
→否定を認識しても、脅威を感じる状況とそれに付随して生じた否定的な感情を打ち消す力が弱ければ弱いほど自己肯定感は低い
自己肯定化から自己肯定感にアプローチすれば、およそこのような解釈になるでしょう。
この「そもそも論」である言葉の定義は非常に難しく、実際に「自己肯定感」には諸説あることも事実です。
自己肯定感を支える「自尊感情」からアプローチ
自己肯定感を定義する上で、密に関係する、あるいは自己肯定感そのものを支えると解釈できる概念に「自尊感情」があります。
自尊感情とは…自己に対する評価感情で、自分自身を基本的に価値あるものとする感覚。自己価値や自己尊重とも訳される。自己に対する記述である自己概念とは通常区分される概念であるが、記述は価値評価を含んでおり、両者は厳密には区別されえないとする考えもある。
自尊感情は、その人自身につねに意識されているわけではないが、その人の言動や意識態度を基本的に方向づける自分自身の存在や生を基本的に価値あるものとして評価し信頼することによって、人は積極的に意欲的に経験を積み重ね、満足感を持ち、自己に対しても他者に対しても受容的でありうる。このような意味において、自尊感情は精神的健康や適応の基盤をなす。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
つまり、自尊感情とは行動や言動、態度といった表出される行動を方向づける感情となります。そして、そんな肯定的な感情が生まれるためには、
- 自分自身に価値があると自己評価ができていること
- 自分自身を信頼していること
これらが大切になります。この自分自身に感じる価値と自分自身への信頼は、まさに自己肯定感を支える感情となります。
若年層に限定されますが、実際に文部科学省の調査においても、自己肯定感には、
- 自分には、よいところがある
- 今の自分が好きだ
- 自分自身に満足している
などの項目が自己肯定感と関連すると報告されています。
引用:文部科学省「平成26年度 高校生の生活と意識に関する調査(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の結果から作成」より
これらの項目はまさに「自己評価ができている」ことと「自分自身への信頼」と関連していることから自己肯定感を支えている大きな要素として自尊感情があると判断して良いでしょう。
「自己肯定感」と「自己効力感」の違い
自己肯定感と似ている言葉に「自己効力感」という言葉があります。
自己効力感とは…自分が行為の主体であると確信していること。自分の行為について自分がきちんと統制しているという信念。自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信が自己効力感である。
よく似た言葉ですが、その概念は異なるものなので注意しましょう。「自尊感情」は「自己肯定感」の根幹を成すものでした。一方で自己効力感は「外部からの要請への対応」といった評価的な側面があります。
つまり、「自己効力感」は自己肯定感の高い人の実際の行動に伴う確信的な評価だと解釈できます。
つまるところ、自己肯定感の定義とは?
ポイント①:「自己肯定化」の力の強弱が自己肯定感の高低に影響する
自己肯定感の高低は「自己肯定化」の強弱に影響を受けるということになります。つまり、自己肯定化とは、
特定の自己概念が脅威にさらされると、その特定の自己概念を直接的に防衛するのではなく、より広範で全体的な自己の統合性を肯定・確認することで脅威に対処する
であり、
自己肯定化が強く働く人
↓
脅威に積極的に対応する行動や言動が多い
↓
自己肯定感が高いと判断できる
一方で、
自己肯定化の働きが弱い人
↓
脅威に対して消極的になる
↓
自己肯定感が低いと判断できる
といった公式が成立するでしょう。
ポイント②:自己肯定感は自尊感情に支えられている
ここは難しく考える必要はなく、単純に自己肯定感は自尊感情に支えられているという解釈をしていれば問題ないでしょう。
つまり、自己肯定感の高低には、その要素として自尊感情が大きく関わっているとも言えます。それほどに自己肯定感を説明する上では自尊感情が大切であるということを覚えておきましょう。
つまるところ、自己肯定感とは一体なに?
大きくはセルフマネージメントに含まれる自尊感情を基盤とした自己肯定化の強弱を示す概念
自己肯定感の低い人に共通する特徴とは?
自信のない行動が多い
自己肯定感の高い人は「自分には自分らしさがある」と自分自身を捉えることができます。一方で自己肯定感の低い人は、自分らしさがあったとしても、それがマイノリティー(少数派)だとしたらマジョリティー(多数派)に近づけようとします。
つまり、個性も含めて自分を認めれず、自分の行動や言動や人と違うことを恐れることで、多数派に迎合していきます。
このように言動や行動に自信が持てないことは自己肯定感の低い人の大きな特徴だと言えるでしょう。
否定的な言動が多い
自己肯定感の低い人たちは言動の節々に否定的な表現が出ます。
- どうせ私なんて…。
- 努力しても何も変わらない…。
- 努力は報われない…。
- 結局私が頑張ったところで…。
など。否定的な言動も自己肯定感の低い人の特徴だと言えます。
すぐにネガティブな感情を抱いていしまう
先ほどの否定的な発言の裏にある心理がネガティブな感情となります。否定的な発言の背景には「自尊感情」が関係しています。
過去の育った環境ももちろん影響しますが、自分自身の中に存在すべき成功体験がないことによって、物事をポジティブに捉えることが難しくなってしまっています。
結果、「自分にはどうせできない」という決めつけにも似たネガティブなスイッチが入ってしまうようなタイプは自己肯定感の低い人の特徴を備えています。
考え方や物事の判断に「芯」がない
自信がなく、物事を否定的に捉え、ネガティブな感情に陥ってしまう根本的な原因は、
人は積極的に意欲的に経験を積み重ね、満足感を持ち、自己に対しても他者に対しても受容的でありうる
といった意欲的な経験の積み重ねが乏しく、結果的に考え方に芯がない、と周囲の人たちから判断されてしまうことになります。
人生にはあらゆる場面で大小を問わず「自分自身の選択」がつきまといます。この局面、局面において積極的かつ意欲的に選択をし続けた人は、たとえ失敗があったとしても「自分が選択した結果だから仕方ない」と自分の失敗という選択にさえも、肯定的な意味づけができます。この肯定的な意味づけの結果、自分自身の考え方や判断基準に明確な「芯」が生じることになります。
一方で、選択することを恐れ、ときに他人に選択を任せたり、自分で選択をしてもその選択にすぐ「言い訳」をしてしまうような人は、人生における選択から何も得ることが出来なくなってしまうものです。その結果、考え方や判断に自分自身の「芯」を持つことができなくなってしまいます。
考え方や判断に「芯」が無いことは自己肯定感の低い人の特徴だといえるでしょう。
自己肯定感を高めることで生じるメリット
自己肯定感が高い人の特徴には、
- 挑戦的な気持ちを持っている
- 自信ある行動がとれる
- 考え方や判断の「軸」がしっかりしている
- 自分に対しても他人に対しても受容的(寛大)になれる
などがあります。
つまり、自己肯定感を高めることで物事の捉え方や考え方、物事の判断基準から実際のアクションに至るまですべてにおいて前を向くことができるメリットが生じることになります。
自己肯定感を高める方法5選
自分自身の自己肯定感が高いのか?あるいは低いのか?そのデータを数値化することは難しいものです。でも「何となく自分の中に存在する自己肯定感が低いのか?高いのか?」のおよその検討は、それぞれの評価として理解できることでしょう。
なんとなく自己肯定感が低いと感じている人も、もっと自己肯定感を高めたいと感じている人も、次の方法を積極的に取り入れて、より高い自己肯定感を身に付けてみましょう。
ネガティブな発言をしない
これが最も大切で自己肯定感を高める第一歩であると考えてください。
あなたが発言するあなたのネガティブな言葉はまず初めにあなたの耳が聞き、あなたの脳が記憶します。ネガティブな感情をネガティブなままに言語化してしまうと、そのネガティブな感情はあなた自身に強く根付いてしまうものです。
まずは「一切のネガティブな発言をやめる」ことから始めてみましょう。
睡眠のリズムを強く意識する
日々の生活で何も考えず、つまり何も選択することなく毎日を終えている人はいません。例えばご飯一つにしても「今日はサンドウィッチにしようかな?」あるいは「今日は丼ぶりにしようかな?」と選択をし続けます。
人生には選択が常にやってくるからこそ、日々に疲れが生じます。そんな疲れを回復させる最大の方法は「睡眠」です。つまり、
「睡眠」=「回復」
という公式が成立しています。そんな睡眠の質が上がれば上がるほどに回復力も高まるものです。
人は眠気やだるさを感じていては、物事を前向きに捉えることはできません。自己肯定感を高めるためにも、質の良い睡眠と、睡眠のリズムを普段から強く意識するように心掛けましょう。
自分の良い部分にフォーカする癖をつける
人それぞれの特色が存在しますが、基本は良い思い出よりも悪い思い出が頭には強く残りやすいものです。同じように自分の良い部分よりも悪い部分にフォーカスしてしまう傾向が多くの人にはあります。
そこで、悪い部分ではなく自分自身の良い部分にフォーカスする意識を持つようにしましょう。自分の良い部分に強くフォーカスすることで自分自身の良い情報が頭に残るようになり、物事の捉え方にも良い変化をもたらすことになるでしょう。
感情を抑えつけない
良い感情も悪い感情も抑えつけないことです。自己肯定感には、自己肯定化という概念があり自己肯定化では、
特定の自己概念が脅威にさらされると、その特定の自己概念を直接的に防衛するのではなく、より広範で全体的な自己の統合性を肯定・確認することで脅威に対処する
という解釈があります。
感情を押し潰そうとするのではなく、良いことも悪いこともより広範囲な視点で見ることで、自然と客観的な視点を持てるようになります。
感情を抑えることに力を注ぐのではなく、また物事をすぐに判断することなく、まずは思うままに客観的に捉える力を持つことができれば自己肯定感もまた自然と高くなります。
自分を認め、すぐに前を向く
自分や周囲に生じている物事をありのままに認識した上で、可能な限り早く前を向くことを心掛けましょう。
気持ちが沈んだり、辛い状況がまったくない人生は恐らくないでしょう。大切なことはまさに、
自分自身が脅威にさらされたときに、その物事から目を背けることなく、客観的な視点で全体を捉え、自分自身を肯定すること
となります。
つまり、どんな物事であっても自分を認めた上で可能な限り早い段階で前を向く、前向きに物事を捉えるように心掛けましょう。
些細なことでも比較的大きな出来事であっても、最終的には前を向くといった経験を重ねることができれば、自然と自己肯定感は高まってくるでしょう。
「自己肯定感」のまとめ
ここでは自己肯定感そのものの理解を促進するために、「自己肯定化」あるいは「自尊感情」といった新たなキーワードから「自己肯定感」にアプローチしてみました。
また、自己肯定感の低い人の特徴や自己肯定感を高めるための方法についてもご紹介しました。
自己肯定感とは近年注目を集めているキーワードであるため、その使い方や解釈、捉え方のニュアンスは人それぞれだという事実もあります。
そんなときは、深く考えることなく、まさに字のごとく、
「自己」を「肯定」する「感」覚
が優れているのかどうか、とういう単純な尺度で解釈すればよいでしょう。
大切なことは自己を肯定的に感じることができれば、社会を生きていく上で、それに付随する「+」の効果があると覚えておけばまずは十分でしょう。