近年、企業のストレスチェックの義務化が進んでいることを知っていますか?
2015年12月1日より、常時50名以上いる事業場に、ストレスチェックが義務付け
ストレスチェック義務化の波もあり、メンタルヘルス関連事業も多くなってきています。
その流れを受けて、「カウンセリング」という仕事も多くの人に認知されるようになりました。
ここでは、カウンセリングの仕事の実際について、現場の先生へのインタビューを交えながらご紹介します。
カウンセリングの実際とは?
カウンセリングと聞いて人はどのようなイメージを持つものでしょう?
多くの人は
- 癒し
- 悩みの相談
- ココロが弱っている人を助ける
というような回答になります。
そして、カウンセリングには必ず心理学のイメージが存在します。
日本では初となる心理系の国家資格である「公認心理師」の法案のなかでカウンセリングとは、
「心理的な支援を要する相談者の心理状態を観察、分析し、相談者や関係者に助言、指導などの援助を行うこと」
という表現で、その仕事が表されています。
ココロの状態が良くない人のココロの状態を良くする。これがカウンセリングの主たる目的になります。
つまり「-」から「±0」にココロをシフトさせるのがカウンセリングの仕事です。
カウンセリングと類似する仕事でもあるコンサルティングの仕事について知りたい人は以下の記事を参考にしてみてください。
カウンセリングの仕事とは?
カウンセリングの仕事とは、心理カウンセラーの先生がクライアントの悩みを聴き、その悩みに寄り添うことです。
現在は主に臨床心理士を中心とする心理カウンセラーがその役割を担っています。
また、日本でのカウンセリングでは「来談者中心療法(クライアント中心療法)」が一般的です。
心理的負債を抱えているクライアントの心理的負債を解消することが、カウンセリングの果たす役割であるといえるでしょう。
カウンセリングを受ける人たち
カウンセリングを受ける人たち=クライアントは心理的負債を抱えており、心理的支援(援助)が必要な人たちということになります。
ここでキーワードになる「心理的負債」とはココロの借金をイメージしてください。
心理的負債は(金銭的)借金と同じような特性を持っています。
その特性とは「まだ返せるだろう」「大丈夫だとう」と考えてるうちに返済が不能になってしまう点です。
心理的負債「まだ自分は大丈夫」と考えているうちに、一人では抱えきれなくなってしまうのです。
心理的負債の大小はあれど、心理的負債を返済するために心理的支援が必要になった人たちがカウンセリングを受けるといえます。
カウンセリングの実際、これからの展望について
ここでは現場でカウンセラーとして活躍している心理カウンセラーの先生にカウンセリングの実際について話しを聞いた内容を記載します。
インタビューを通じて、少しでもカウンセラーやカウンセリングの実際を理解できることでしょう。
Q, 心理カウンセラーの仕事について
私たちの仕事、心理カウンセラーという仕事は、恐れ多くも医師である精神科や心療内科と同等に捉えられることもあります。一方では、占いなどの比較的ポップな印象のモノと同等に捉えられることもあったりします。
正直なところ「心理カウンセラー」という仕事が社会のなかで確かなポジショニングを確立出来ているとは思っていません。
そのため、潜在的なニーズは増えてきているのかもしれませんが、仕事として大きく増えているという印象はないですね。
Q,心理カウンセラーという仕事の大変さについて
何が大変なのか?で言うと、「客層がつかめない」仕事です。医療系の印象から易学的な印象まで、とにかく社会のなかでのポジショニングが確立されていないのです。
例えば“20代女性”の層が多いなどの一定の決まりや法則が存在せず、クライアントの年齢や性別、職業やステータスなどは非常に幅広いです。
そのため、相談内容も多岐にわたるため汎用性のある知識が求められます。
クライアントの気持ちをつかむためにはあらゆるジャンルに関する知識が求められる印象です。
Q,心理カウンセリングは医療?それともサービス?
それは「カウンセリング=心理学」であるということです。
医療に近いモノは臨床心理であり医療機関のカウンセラー募集などは決まって『「臨床心理士」資格を保有している者』という求人が出ています。
カウンセリングで基本となる心理学については「一度は勉強したかった!」と言う人も多くいます。でも一般的にイメージされる心理学は恐らく「臨床心理」系ではなく「社会心理」系が多いです。
「カウンセリング=心理学」という認識は持ってもらえていますが、一般に好まれる心理学には社会心理学の類のものが多く、カウンセリングの仕事でメインとなる心理学は臨床心理学です。
カウンセリングの基本が臨床心理にあると考えると心理カウンセリングは医療というカテゴライズが一般的なのかもしれません。
Q,臨床心理などのキーワードについて
心理学にも大きなカテゴリーで言うと、
- 感情や認知、学習などの基礎的な心理学概論と言われる基礎心理学。
- 教育や発達、臨床を含む臨床心理学。
- 産業や組織、社会を含む社会心理学。
という分け方が出来ると思います。
例えば、「心理学=相手のココロを読む」などというポップな印象が出回っているように、一般には間違いなく心理学は社会心理学であることが多いですね。
そのため研修などで喜ばれる内容は社会心理学が非常に多いです。
Q,カウンセリングの実際と、私たちの感覚にズレがあるんですね?
そうですね、
心理学=面白そう → カウンセリング=心理学 → カウンセリング≠面白そう
これは公式として成立しないとおかしいですよね?
「心理学=面白そう」、「心理学=カウンセリング」であるなら「カウンセリング=面白そう」という公式があってもいいはずなのですが、この公式は残念ながら成立していません。
これはやはり実際に行われている心理カウンセリングでは医療・治療的側面が強いからでしょう。
つまりカウンセリング「そもそも」の定義が医療・治療を指すのでしょう。
Q,公認心理師という国家資格について
今まで民間の資格ばかりでしたが国家資格ができるわけですから、少しは良くなるでしょう。
ただ、公認心理師という資格は「名称独占であり業務独占ではない」という一面を持っています。
国家資格ですが、その資格を持っているから「〇〇までは出来る」などの業務のしばりはなく、あくまでも名称独占になります。
つまり、公認心理師を持っているからカウンセラーをしていい、持っていないからカウンセラーをしてはいけないなどの拘束力などは一切ありません。
ただ、国家資格が出来る以上、社会での「信頼」や「信用」は大きく変わるでしょう。
Q,今後の心理カウンセラーはどうなっていく?
現在、様々な領域や方法論で多くの心理カウンセラーの先生たちが現在も仕事しています。
もし、心理カウンセリングを医療の一環に位置づけるなら、ビジネスの枠組みに入る必要性はないと思いますが、医療の一環に位置づけられることで対象となるクライアントは一気に絞られます。
国家資格が出来る以上は、医療現場で働く人以外の先生たちが、やはり一定数の「心理カウンセラー」として生計が立つようなビジネスの位置づけが必要になると思います。
Q,ビスネスの位置づけになるためには?
現在、医療現場がなぜ一定の臨床心理士に給料を出せていると思われますか?
それは、医療にはお金がかかるものだという大前提が皆さんの枠組みの中にあるからです。
一方で、友達や家族に悩みを相談した時にお金を払ったことはありますか?
基本的には、ないですよね。ここがビジネスと成立するか否かの「ミソ」になる部分です。
どれだけの専門性を持っていても悩みを相談することにお金を払う感覚を持っていない人たちからお金をもらうわけですから。
この感覚が変わらない限りはビジネスの枠組みに心理カウンセラーという仕事が入ってこないんだろうなと考えています。
それでもこの仕事は社会を良くするためには、必要な仕事だと思っていますし、今後の日本においても大事な役割を担うということは想像できます。
だから今はとにかくどうすればビジネスとしてきちんと成立するのか、それを考える機会は多いですね。
まとめ
カウンセリングと言えば、心理学。
心理学は面白いモノだという認識がある一方で、カウンセリングに対して存在する「悩んでいる人が行く」という面白いからは対極にあるイメージのズレ。
ギャップが存在します。
最近では、
- 夫婦のカウンセリング
- トラウマのカウンセリング
- うつのカウンセリング
- 人間関係のカウンセリング
- 性格の改善カウンセリング
など。
〇〇を専門にしています、などのうたい文句を出した私設のカウンセリング機関も増えています。
今後もそのような専門分野を掲げる企業や機関が増えることでクライアントが具体的なイメージを持てるようになると良いでしょう。
いずれにせよ、公認心理師という国家資格の誕生が「心理カウンセラー」の社会的位置づけの分岐点になるでしょう。