「カウンセリング」と「コーチング」の違いを明確に説明することは少し難しいですよね?でも、カウンセリングもコーチングも「ココロの問題を扱う」専門家にココロの問題について解決を求めるモノであり、かつ「無形商材」つまり形のない商品を扱っている仕事だということは分かると思います。
カウンセリングやコーチングとともに「似て非なる」モノにコンサルティングというものがあります。
「コンサルティング」と「カウンセリング」の違いについて、まず触れたいと思う方はこちらを参考にしてみください。
カウンセリングとコーチングの決定的な違いは、「方法論」と「フォーカスする時間軸」にあります。
ここではそれぞれの定義も含めてカウンセリングとコーチングの違いについて見ていきましょう。
カウンセリングとコーチングの定義とは?
カウンセリングとコーチングの違いを理解する上でそもそも論である定義について少しだけ触れてみましょう。
カウンセリングの定義とは?
カウンセリングには明確な定義があります。
カウンセリングとは…適応上の問題を理解し、解決できるよう、他の人がその援助につとめるというような関係
引用:有斐閣『心理学辞典』より
とされます。また、カウンセリングには、
「他人の個人的障害の解決が可能となるよう援助できる資格を備えた専門家と相談者との1対1の関係において生起する過程」
あるいは、
「二人の人の間の社会的学習の相互作用である」
という定義も存在しています。
つまりカウンセリングとはカウンセラーとクライアントが1対1の関係のもとで、クライアントの(社会への)適応上の問題を共有しながら解決していくという定義がなされているものです。
コーチングの定義とは?
カウンセリングと比較すると、コーチングには明確な定義はなされていないと言えます。ただし、日本語に直訳すると「指導者」という解釈も成立することから、コーチングでは主にクライアントの育成がその基盤にあると判断できます。
育成とは具体的にはマインドの確認や目標に近づくための思考の変化などが挙げられるでしょう。
そして、コーチングでは目標の設定と目標達成を軸にコーチとクライアントが相互にコミュニケーションを取りながら、目標達成に必要な判断軸や目標を達成するための行動を学習していくという定義ができるでしょう。
またコーチングではコーチがリマインダーとして、目標へ向かう方向性や思考をアジャストしてくれることもあるでしょう。
カウンセリングとコーチングの違いとは?
カウンセリングとコーチングの違い1:フォーカスする「時間軸」の違い
カウンセリングでは、
- 過去の出来事の回想
- 過去に起きたネガティブな出来事の捉え方
- 過去に起きた出来事に付随した感情
- 過去に生じた否定的な感情
- 過去のネガティブな感情がどうなっているか?
など。とにかく過去、過去の出来事に対する感情や認知が軸になります。つまり、過去の出来事を掘り下げ、コミュニケーションを取りながら、徹底的に傾聴します。この傾聴作業を通じてクライアントのココロの推移を細かく観察していきます。ただし、過去のネガティブな感情を想起させることで感情が溢れ出すこともあるためより慎重な作業になると同時にセンシティブな問題を扱うため、クライアントの信頼関係の構築にも注力します。
一方で、コーチングでは、
- 未来にどうなりたか?
- 将来的に何を達成したいか?
- 未来に何を達成したいか?
など。とにかく未来に焦点を当てたコミュニケーションが軸となります。時間軸の捉え方ではカウンセリングとは真逆、対照的であると言えます。過去を深堀することはなく過去のことを聞く場合は、せいぜい過去の判断基準、過去の判断の軸を聞く程度に留めます。
実践者目線「カウンセリングとコーチングの違い1」まとめ
カウンセリング:クライアントの過去にフォーカスする
コーチング:クライアントの未来にフォーカスする
カウンセリングとコーチングの違い2:共有する「モノ」の違い
カウンセリングでは過去のネガティブな出来事や過去のネガティブな出来事が生じたときの感情を聞き出すことが主たる目的とも言えます。つまりカウンセリングではクライアントの過去の辛かったことと辛かったことに付随して生じたネガティブな感情を共有しています。この共有した負の感情を少しずつ和らげる実践がカウンセリングとなります。
一方でコーチングでは、「この先どうなりたいのか」や「なりたい自分」などの未来の目標を共有しています。この共有した目標に一緒に向かう実践がコーチングとなります。
つまり、カウンセリングとコーチングの実践中では、そもそもの共有しているモノが大きく異なっています。
実践者目線「カウンセリングとコーチングの違い2」まとめ
カウンセリング:クライアントの負の感情を共有する
コーチング:クライアントのなりたい自分である目標を共有する
カウンセリングとコーチングの違い3:実践中の時間の使い方の違い
カウンセリングを行っているときとコーチングを行っているときでは、時間の使う方が全く異なります。カウンセリングでは傾聴つまり聴くという入力作業が中心となり、コーチングでは話す。質問するという出力と聞くという入力が対等になります。
つまり、クライアントも同じようにカウンセリングの実践中はクライアントがほとんどの時間を過去の体験を話すことに使用します。一方で、コーチングの実践中はクライアントも話すという出力する時間と聞くという入力する時間が対等に存在しています。
カウンセリングとコーチングでは、実践中のクライアントの時間の使い方、話す=出力、聞く=入力の時間比率にも大きな差があります。
カウンセリングにはカタルシスという心理作用があります。
カタルシスとは…ギリシャ語で「浄化」の意味。精神分析学の初期、ブロイアーがヒステリー治療の際に、うっ積した感情の表現を促すことによって症状が改善することを発見して、初めてこの用語を用いた。過去に起こった恐怖や罪悪感を伴った外傷体験は、意識に浮かべると不快や不安が起こるため抑圧されやすい。そういった抑圧された感情や葛藤などを自由に表現させることにより心の緊張をとく方法。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
つまり、カウンセリングではクライアントに話しをしてもらうことで抱えている悩みや不安を払拭する、整理する作業を行っています。一方でコーチングでは同じように頭の中を整理しますが、こちらから質問をぶつけることで意図的に考える作業を行います。つまり、コーチングでは考えさせることもコーチングの実践者の大切な役割となります。
実践者目線「カウンセリングとコーチングの違い3」まとめ
カウンセリング:クライアントが「話す=出力する」時間がそのほとんどである
コーチング:クライアントの「話す=出力」、「聞く=入力」の時間が比較的均一である
カウンセリングとコーチングの違い4:セッションにおける「狙い」の違い
カウンセリングでは、フォーカスする時間は過去です。一方で、コーチングではフォーカス時間は未来となります。
また、カウンセリングで共有するモノはクライアントの負の感情となります。一方で、コーチングで共有するモノは目標です。
これらの、
- フォーカスする時間の違い
- 共有するモノの違い
は、そもそもの「狙い」が異なるためです。
カウンセリングでは過去の体験に焦点を当て、負の感情を共有することでクライアントの緊張状態からの解放を目指します。
一方でコーチングでは、未来のなりたい自分に焦点を当て、質問的コミュニケーションを行いながら意図的に未来像に近づける作業を行います。
つまり、カウンセリングの狙いは悩みからの解放であり、コーチングは目標達成の伴走者として機能することになります。
実践者目線「カウンセリングとコーチングの違い4」まとめ
カウンセリング:クライアントの「解悩みの解消をすること」が狙いとなる
コーチング:クライアントの「目標達成を伴に目指すこと」が狙いとなる
カウンセリングとコーチングの違い5:クライアントの置かれている状況の違い
こちらの記事では、「カウンセリング」と「コンサルティング」の違いを説明するときに、次のような表現を用いました。
カウンセリング:「-」から「±0」にココロをシフトさせる
コンサルティング:小さな「+」の状態をより大きな「+」にシフトさせる
この考え方と同じように、
カウンセリング:「-」から「±0」にココロをシフトさせる
コーチング:小さな「+」の状態をより大きな「+」にシフトさせる
となります。つまり、カウンセリングはマイナスの状態に陥っている人のサポートであり、コーチングは頑張りたい人の気持ちをより強固なモノにしていく作業だと言えます。
カウンセリングとコーチングでは、クライアントの置かれている状況の違いがあり、
カウンセリング:「-」から「±0」にココロをシフトさせる
コーチング:小さな「+」の状態をより大きな「+」にシフトさせる
理解頂けたと思います。では、最後にコーチングとコンサルティングの違いだけを簡単にご紹介します。コーチングとコンサルティングの違いはクライアントへの否定が入るかどうか?となります。
コーチングでは比較的自由な発想やイメージのもとに目標を設定します。つまり、実現可能性を問わない「なりたい自分」像を目標に設定しても問題ありません。一方でコンサルティングの目標設定をする場合には実現可能性に強いこだわりが必要となり、実現可能性の低い目標自体は否定の対象になります。
コーチング:クライアントと「なりたい自分」という理想的な目標を共有する
コンサルティング:クライアントと「あるべき姿」という実現可能性を含む目標を共有する
ことになります。そのため、コーチングとの決定的な違いとして置かれている状況は同じであったとしても、目標設定の段階からコンサルタントが多くを否定することは、大きな違いと言えるでしょう。
実践者目線「カウンセリングとコーチングの違い5」まとめ
カウンセリング:「-」から「±0」にココロをシフトさせる
コーチング:小さな「+」の状態をより大きな「+」にシフトさせる
※コーチングとコンサルティングではクライアントの状況は類似していても、否定を伴うアプローチが存在することで方法論および目標が大きく異なる。
カウンセリングとコーチングには共通点もある?
これまでに違いを紹介しましたが、共通点、類似点も数多く存在しています。
それは、
- 目に見えない無形性であること
- クライアントのココロの問題を扱うこと
- クライアントの感情の変化を促進すること
- コミュニケーションを主体にしていること
- より良く生きることを目指す
などとなります。
他にも多くの共通点がありますが、「コーチング」か「カウンセリング」か、どちらを選択する際にも、決して軽視してはいけないことがあります。
それが、
- 結果が「相性」によって大きく左右されること
です。
決して軽視してはいけない「相性」への意識
カウンセリングもコーチングも無形性のサービスである以上、「属人的」であることが共通点でもあり、サービスの脆弱性でもあることを覚えておきましょう。
属人的とは…属人性、属人化とも称される。その人の持つ知識や経験、スキルが結果に左右することが極めて大きく、特定の人材や担当者でしか業務や作業を行えないとするサービスや業務
つまり、あなたがカウンセリングやコーチングを受ける際にはカウンセラーやコーチとの相性が最も大切なポイントになります。カウンセラーやコーチとの相性が悪ければ、カウンセリングやコーチングは無意味なモノになってしまいます。
一方で、カウンセラーやコーチとの相性が良い場合は大いに意味あるモノとなります。
人対人であり、人のココロを動かすことそのものが仕事である以上「相性」は存在する
「カウンセリングとコーチングの違い」のまとめ
コーチングかカウンセリングかの「迷い」があるということはおそらくあなたの状態は、
自分のなかに「なりたい自分」がいる
「なりたい自分」になれてなくて、苦しんだり辛い気持ちになっている
ことでしょう。
もちろん「なりたい自分」がある以上、コーチングでも問題ありません。でも敢えてなぜカウンセリングなのかというと、
カウンセリングの延長線上にコーチングが存在する
コーチングの延長線上にカウンセリングは存在しない
ためです。カウンセリングを受けて、辛かったり苦しんだりする気持ちをしっかりと整理することであなたの曇っていた視界は良好となり、より強い気持ちで「なりたい自分」を目指せることでしょう。
人のモチベーションは自然発生的に沸き起こる
ものです。不安や辛い気持ちがあるとそんな自然発生的に生じるモチベーションの障壁になってしまいます。
カウンセリングの延長線上にコーチングは存在しているため、迷いが生じている場合はまずはカウンセリングを受けてみても良いでしょう。
実践者目線でカウンセリングとコーチングの違いとして、
- フォーカスする「時間軸」の違い
- 共有する「モノ」の違い
- 実践中の時間の使い方の違い
- セッションにおける「狙い」の違い
- クライアントの置かれている状況の違い
を紹介しました。
それぞれに違いがあり、違いに伴う効果、メリットも異なります。
最後に実践者目線、実践を通じて感じるカウンセリングとコーチングの明確な違いをお伝えすると、
カウンセリング;メンタルケアという概念を多分に含む
コーチング:メンタルトレーニングという概念を多分に含む
でも、カウンセリングにもコーチングにも人ひとりの人生をより良くするという最大の共通点が存在しています。