カウンセリングは「無形のサービス」です。そのため相談をする方が「なんだか、求めていた感じと違う!」と違和感を覚えることになってしまえば、サービスとしては成立していないことになるでしょう。
このような無形のサービスには「コーチング」や「コンサルティング」などがあります。いずれも広義には「知識を提供するサービス」と捉えることができるでしょう。
そもそも、
- カウンセリングとコンサルティングはどう違うの?
- カウンセリングとコーチングはどう違うの?
その違いを知りたい方は、それぞれこちらの記事を参考にしてみてください。
カウンセリングとコーチングの違いについてはこちら!
カウンセリングとコンサルティングの違いについてはこちら!
同じ無形性のサービスであってもコーチングやコンサルティングは、カウンセリングと比較するとアドバイス量は圧倒的に多いでしょう。特にコンサルティングでは目標に明確な数値などが設定されていることも多く、意見を衝突させながらでも目標に向かうことがあるでしょう。
では、カウンセリングではアドバイスをもらえるのでしょうか?あるいはカウンセリングでは本当にアドバイスをもらえないのでしょうか?
ここではカウンセリングに行くと、カウンセラーからアドバイスをもらえるのかどうかについて解説していきます。
【カウンセラー目線で解説】カウンセリングではアドバイスはもらえないって本当?
相談者は“一刻でも早く”いま抱えている悩みから抜け出したいはずです。
そのため、
カウンセリングに行って的確なアドバイスをもらって、問題をクリアにしたい
と考えていることでしょう。
そのため、カウンセリングにアドバイスを求めることはごく自然なことだと思って良いでしょう。でも、この場合にカウンセラーはアドバイスをするのでしょうか?
カウンセリングでは、ラポールと言われる信頼関係が非常に重要です。
ラポールとは…カウンセリングをはじめとする心理療法において、治療者(面接者)とクライアントの間に存在する人間関係をさす。心理治療が効果的に施されるためには、治療者は親密で暖かい感情の交流をもつよう心掛けることが大切であり、ラポールが治療の第一歩である。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
カウンセリングで信頼関係を築くポイントには「親密で暖かい感情の交流」が不可欠であるため、関係を築く前に、いきなりズバッ!とアドバイスをするカウンセラーはきっといないでしょう。
そもそも「アドバイス」とは?
カウンセラーに対して、クライアントが求める「アドバイス」という言葉には方向性を指し示してくれる「助言」といったイメージを抱いている人も多いでしょう。
ただし、アドバイスという言葉には「助言」以外にも「忠告」といった意味合いも含まれています。
例えば、あなた自身が「人生の選択(A or B)」を迫られていると仮定します。「A」の道か「B」の道のいずれかに進まないといけない状況であるとき、あなたは本心では「A」の道に進みたいと考えていたら、「A」の道に進むための助言を心のどこかで求めることでしょう。
でも、カウンセラーが「B」の道をすすめたとしたら、それはあなたに対する否定になってしまうことでしょう。
そのときに、相談者はきっと「私のことを何も知らないのに“B”をすすめるなんて!」と怒りにも似た感情を抱くこともあるでしょう。
この怒りといった感情は少し極端な表現ですが、それでも数回会った段階での考え方の差異や捉え方の差異にはほとんどの人は意外と過敏に反応してしまうものです。
「アドバイス」には否定というリスクが含まれている
アドバイスには「助言」という意味合いもあれば、ときに「忠告」といった相手への否定も含まれることがあります。
仮にあなたがコンサルティングを受けに来たのであればアドバイスは惜しみません。むしろ目標達成に向かう上での誤った考え方や方向性に「NO!」を突きつけることもあるでしょう。
でも、カウンセリングでは「受容」や「傾聴」、そして「カウンセラーと相談者」との信頼関係を何よりも最優先としているため、カウンセリング開始段階からアドバイスには踏み込まないカウンセラーがほとんどだと言えるでしょう。
「カウンセラーが(基本的に)アドバイスをしない」には意味がある
カウンセラーがアドバイスしない本質的な理由は、
アドバイスに否定が含まれるリスクがあること
となります。そのリスクとは否定による「親密で暖かい感情の交流」ができなくなることです。ただし、他にもにカウンセラーがアドバイスをしない意味は存在しています。
それが、
- カウンセラーへの依存度を高めないこと
- 相談者の抱える問題の根本的な解決を目指すこと
となります。
アドバイスをしない理由1:カウンセラーへの依存度を高めないこと
仮に幾度となくカウンセラーが的確なアドバイスを繰り返したとします。すると相談者は生活上での問題が生じるたびに「カウンセラーに相談すればいいか!」と思うようになってしまってうことでしょう。
カウンセラーとしてのビジネス、つまり商売上では利益が出るので良いという判断もできます。でも、カウンセラーへの依存度が高めることで問題を処理する能力がどんどん欠落してしまうことでしょう。
アドバイスをしない理由2:相談者の抱える問題の根本的な解決を目指すこと
依存度とも重複する部分もありますが、問題が生じるたびに繰り返しアドバイスを行っていると、相談者自身の抱える問題の根本的な解決には至りません。
問題が生じた際に、
- どのように考えたのか?
- どのように思ったのか?
- どのように対応したかったのか?
- どのようにすればよかったと思うのか?
- どのように解決したいのか?
など、相談者自身の想いや方向性を自ら導いていくからこそ、そこには気づきと問題へのアプローチスタイルが確立されていきます。
そんな問題の根本的な解決を目指す意味があるからこそ、あえてアドバイスを行わないカウンセラーも多いでしょう。
カウンセラーがアドバイスをするときとは?
カウンセラーは基本的にはアドバイスを行いません。でも、全くアドバイスをしないわけではありません。
では、カウンセラーはどのようなとときにアドバイスをするのでしょうか?それが、
- 信頼関係が築けていると確信を持てるとき
- 学問的背景に合致しているとき
となります。
信頼関係が築けていると確信を持てるとき
アドバイスにはときに否定が含まれていることは先ほどもお伝えしました。そのため、1回や2回のセッションでは残念ながらアドバイスをすることは稀となります。
ただし、セッションを重ねるにつれて、相談者の緊張状態が明らかに緩和して、「親密で暖かい感情の交流」が出来ていると判断した場合はアドバイスを行うこともあります。
アドバイスは信頼関係が構築できているからこそ、相談者のココロの芯の部分に伝わることもあります。つまり、内容が全く同じアドバイスだったとしても、関係性が構築されていないときのアドバイスはあまり機能しないこともありますが、関係性が構築されてからのアドバイスはより強く響くこともあります。
相談事例が学問的背景に合致しているとき
相談者の心理的な状態をカウンセラー側で十二分に理解でき、かつ学問的背景に合致しているときはアドバイスを行うこともあるでしょう。
つまり、アドバイスを行うことでのプラスの側面が大きいという判断に至った場合は、カウンセラーもアドバスを行います。
ただし、カウンセラー自身の個人的な判断や個人的な経験などをもとにアドバイスをすることはなく、あくまでも心理学的背景、知識や知見をもとにアドバイスをすることでしょう。
カウンセリングでアドバイスが欲しいときはどうすればいい?
カウンセリングの基本のなかの基本はカウンセラーが相談者の悩みの解消を目指して、お手伝いをすることです。つまり、対人援助を行うことが基本中の基本となります。
そのため、アドバイスが欲しいときはアドバイスが欲しい旨をカウンセラーに伝えてみましょう。カウンセリングでは、
- これを言ってはいけない
- あれを言ってはいけない
などの制限はありません。
カウンセリングではカウンセラーは相談者のために「自由にして保護された空間」を創り出してくれていることでしょう。
自由にして保護された空間とは…箱庭療法における心理学用語
そのような中で言ってはいけないことがあるとすれば、それは自由にして保護された空間ではなくなってしまいます。
つまり、遠慮することなくアドバイスが欲しいときは「アドバイスが欲しいです!」と伝えるようにしましょう。
そうすることで腕の良いカウンセラーならきっとあなたの想いに応えてくれるでしょう。
まとめ
カウンセリングに対しては、「うつ病」などの精神疾患に対する治療的な側面をイメージを抱く人もいることでしょう。また、「ただただ話しを聞いてくれる“だけ”」といった否定的な側面をイメージする人もいるでしょう。
後者を強く感じる人は、もしかすると「一度カウンセリングを受けたものの何のアドバイスももらえなかった」人なのかもしれません。期待に見合う回答をもらえなかったことできっとがっかりもしたことでしょう。
ただ、アドバイスをしなかったカウンセラーはきっとアドバイスをすることでのあなた自身の心理的な摩擦を懸念したのでしょう。この記事でもご紹介したように、アドバイスはときに、考え方や捉え方の差異を露呈することになるものです。信頼という関係性が構築されないままにアドバイスをされると実はイラッとしていたのかもしれません。
カウンセラーを称する人たちは少なからずとも相手の心理的な洞察には長けているはずです。カウンセラーがアドバイスをしなかったことには、カウンセラーなりの配慮があったのかもしれません。