このような相談は、実際には非常に多いです。厳密には数字に追われるあまりうつ病を発症するようなケースも決して稀ではありません。
営業の成績が残せないことは営業職の人たちにとっては、とても辛いことです。また、営業にとっては、(企業の制度によりけりですが)「数字」が死活問題にも発展しかねないほどに成果が求められる職種です。
基本給+出来高の営業職であれば数字が出なければ営業は価値のない人材だと給料で示されてしまうほどに厳しい職種と言えるでしょう。
人の心理、心理的な変化には必ずと言っていいほどにルールが存在しています。ここでは頑張っても頑張っても成果が出ない営業マンにすぐに使える「営業の心理テクニック」をお伝えします。
この記事をきっかけにあなたが「頑張る方向性」を改めて調整し、あなたが営業という職種で活躍できる人材になることを願っています。
そもそも営業に「心理学=心理テクニック」は役立つのか?
今回は漫画で心理テクニックを「例え」てみようと思います。あなたは「北斗の拳」という漫画をご存じでしょうか?
「北斗の拳」は1980年代に流行した漫画で、その主人公が使いこなしていた秘儀が「北斗神拳」です。この漫画「北斗の拳」では、主人公が次のようなセリフを言っています。
人間は自分の潜在能力の30%しか使うことができんが、北斗神拳は残りの70%を使うことに極意がある
友人関係やら恋愛関係、どんな人間関係でも「想い」を正確に伝えることは難しいものです。だから、相手と、もちろん自分の心理もしっかりと理解し、想いを100%で伝えることができるようになるために、
“秘儀=心理学的テクニック”
が必要になると考えています。
そして、コミュニケーションの基本は、
相手に何を伝えたのか?ではなく、何が伝わったのかを確認する
これが非常に大切になります。
これはコミュニケーションの「軸」を常に相手に合わせていることを意味しています。営業は相手ありきです。間違っても自分「軸」にならずに、常に相手「軸」を心掛けるようにしましょう。
大切にすべき「軸」を大切にしながら、「秘儀(=心理学的テクニック)」を使って新たな自分、「デキる自分」を発掘していきましょう。
営業心理テクニックの「超・基礎」編
まずは日常生活でも、もちろん営業でも知っておくべき心理について見ていきましょう。
心理テクニック1:ジョハリの窓の理解
あなたは「ジョハリの窓」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「ジョハリの窓」は対人関係における気づきのグラフモデルとされていますが、心理学では次のように解説されています。
ジョハリの窓とは…自己ならびに他者から見た自己の領域を示す概念。自分に関するすべての事柄の領域を
「自分」が知っている
「自分」が知らない領域と、
「他者」が知っている
「他者」が知らないの二つの次元によって分けると、四つの四角形の領域に分けることができる。
これらの領域があたかも窓のようであり、ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが提唱した概念であるので、二人の名前をとってジョハリの窓と名付けられた。
自己開示によって、盲点領域(blind window)を小さくしたり、隠ぺい領域(hidden window)を小さくしたりして、開放領域を広げていくことが対人関係の進展や自己理解などにつながる。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
では、なぜ“隠された自己=hidden window”なのでしょうか?それは、営業が戦術的かつ主張的なコミュニケーションが求められる場面だからです。
コミュニケーションは大きく「自己開示」と「自己呈示」に分かれます。
「自己開示」とは…ありのままの自分をさらけ出すこと
「自己呈示」とは…印象を操作して、魅せたい自分を創ること
営業では印象操作が大切になります。よく恋愛上手は営業上手と言います。それは、どちらの場面でも「印象操作」が基本となるからです。
あなたが素直でいい人なのに営業の数字が上がらないとしたら、きっとあなたは「公開された自己」をぶつけているのでしょう。でも営業はある種の「戦い」と捉えてください。戦いに勝つには戦略が絶対に必要になります。
戦いに勝つために、自己呈示と言われる印象操作が必要になります。そして、コミュニケーションは戦術的かつ主張的なコミュニケーションを忘れないようにしましょう。
心理テクニック2:パーソナルスペース
あなたはパーソナルスペースという言葉をご存じでしょうか?
パーソナルスペースとは…個人を取り巻く目に見えない、持ち運び可能な境界領域で、そのなかに他者が入ると心的不快を生じさせる空間である、と定義し一般に普及した
引用・参考:有斐閣『心理学辞典』
そして、現在では「このパーソナルスペース」と言う言葉は広く「対人距離(人と人との距離)」として活用されています。
パーソナルスペースでは、距離ごとが4分類されています。パーソナルスペースの内容を体系的に理解したい方はこちらを参考にしてください。
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パーソナルスペースは次のように分類されています。
密接距離:近接相(15cm以下) / 遠方相(15ー45cm)
固体距離:近接相(45ー75cm) / 遠方相(75ー120cm)
社会距離:近接相(120cmー210cm) / 遠方相(210cmー360cm)
公衆距離:近接相(360ー750cm) / 遠方相(750cm以上)
営業の場合は、4分類のうち
社会距離:近接相(120cmー210cm) / 遠方相(210cmー360cm)
社会距離の近接相、120cmがベストだと言えます!
営業で行った先のテーブルが100cm未満の場合もあります!そんなときは椅子を引き気味に座るようにしてください。一方で、大きな会議室等で机の幅が150cm程度ある場合は前のめりに座っても大丈夫です。
何度も営業をしながら、これが120cmだ、という感覚をカラダに覚え込ませましょう。適度な距離は相手に心理的な摩擦を与えません。
相手が距離感で違和感を覚えてしまうと、「何か違うな~」という気持ちにさせてしまいます。その原因に距離感が隠されていることはよくあります。
相手が嫌がらない距離感をあなた自身でしっかりと把握した上で、つまり120cmほどの距離を取って、営業トークを始めるように心掛けましょう。
営業心理テクニック心構え編
営業を行う上で、あなたがあなた自身を見失わず、相手との距離感を意識するために、
ジョハリの窓→隠された自己を出し引き→印象操作のコミュニケーション
パーソナルスペース→社会距離の近接相→120cm程度
これは、必ず知っておいて欲しい概念です。
この2つの概念を押さえた上で、ここからは営業に大切になる心構え、営業に行く前に知っておくべきキーワードについてお伝えします。
心理テクニック3:評価懸念の解消で印象UPを!
評価懸念とは、「読んで字のごとく」評価を懸念することと考えて良いでしょう。
評価懸念とは、実験場面において被験者が実験者からの評価を気にするあまり、本心とは異なる行動(反応)をしてしまうこと。・・・(中略)・・・具体的には、①被験者が実験者から否定的に評価されることを嫌って、意識的に行動を変えてしまったり、②実験者が喜びそうな行動(反応)を先取りする、といった場合に見出される。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
営業に少なからずとも苦手意識があるあなたは、お客さん(評価者)の存在によって、自分の行動や言動が評価されていると思い込むあまり不安になってしまいます。そして不安から、喚起水準が高まることで支配的な行動傾向(優勢反応=単純作業やよく学習された反応)が強まってしまいます。
喚起水準とは、心理では興奮の程度を表わします。つまり、不安だ!不安だ!と思い込むあまり、不安という優勢反応が行動や言動に表れてしまい、本来のあなたではなくなってしまうのです。
心理テクニック4:「ネガティビティバイアス」に注意を払う
「粗探し(あらさがし)」という言葉があるほどに、「人は人の粗ばかりを見つける」傾向があります。
ただ、人は初対面や付き合いが浅い場合は一般的に、他者をポジティブなモノとして認識する傾向を持っています。
これを心理学では「パーソン・ポジティビティ・バイアス」と言います。
営業では初対面あるいは付き合いが浅い場合が多いですよね。つまり一般的にはパーソン・ポジティビティ・バイアスが機能している分、「ネガティブな情報」を与えてしまうと、その情報に「逆に」注意が集中してしまいます。
ネガティブティ・バイアスとは…一般に評価的にポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が情報価が高く、人が行う判断に大きな影響を及ぼす傾向があることをいう。たとえば印象形成における情報統合過程では、ネガティブな情報はより大きなウェイトを持つことが知られている。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
営業ではお客様に判断を求めます。
- 製品を購入するかしないか?
- サービスを導入するかしないか?
- 契約をするかしないか?
など。判断を行う場面かつ初対面の場面ではネガティビティな情報は大きなダメージになってしまうことを忘れないようにしましょう。
心理テクニック5:「プライミング効果」の活用で印象UPを狙う
プライミング効果とは…先行刺激の受容が後続刺激の処理に無意識的に促進効果を及ぼすこと。「無意識的に」とは、本人は気づいていないという意味である。
引用:有斐閣『心理学辞典』
もともとは実験用語として存在している言葉ですが、広義にはまさに第一印象の重要性を示す言葉だと言えます。
つまり、第一印象そのものが「好印象」だった場合は、後続の印象にも「好印象」がつきまとうでしょう。一方で、第一印象が「悪印象」だった場合は、後続の印象にも「悪印象」がつきまとうでしょう。
人は一度誰かにラベリングを行うと、そのラベリングを簡単には取り除けなくなってしまいます。だからこそ、あなたに好印象のラベリングをしてもらえるよう、第一印象には注意を払わなければなりません。
心理テクニック6:「メラビアンの法則」理解で印象UPを狙う
これは、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱した法則です。
メラビアンの法則とは…人の第一印象は瞬時に判断されるが、その判断材料は「Visual」「Vocal」「Verbal」の3つで、それぞれ視覚、声(質)、内容である。そしてその割合が「55:38:7」であるというもの。
メラビアンの法則によれば、
- 第一印象の判断材料は視覚情報:55%
- 声(声色や質、ボリューム):38%
- 言葉である言語情報:7%
となります。
「何を話そう…。」と不安になって「どう思われるんだろう…。」と心配しているあなたの気持ちはおそらくお客様にバレていることでしょう。
視覚情報と聴覚情報を合わせた93%で印象が形成されることを考えれば話しをする内容に特段こだわる必要はありません。100点満点のテストのうち言語情報では7点しか得ることができません。それよりも大きなウェイトを持つ残りの93%である視覚・聴覚情報にあなたの注意を払いましょう。
心理テクニック7:「調整と係留ヒューリスティック」で印象UPを狙う
人は物事を判断するときに常に「基準点」を持っています。そんな「基準点」の判断に関わる心理が「調整と係留ヒューリスティック」になります。
調整と係留ヒューリスティックとは…アンカリングとほぼ同義である。ある事象の推定に何らかの初期値を設定し、それを係留点とすることで、判断尺度を決めてしまうことをさす。
営業では非常に大切なお客様のココロを動かす心理テクニックとなります。
少し質問をしてみようと思います。
A社の商品:3,000円
B社の商品:7,000円
C社の商品:8,500円
仮にあなたが売り込む商品が2,500円だとしたら、その金額を提示する前に、基準点をお客様側に意図的に設定することが大切になります。
あなたの売り込む商品がお客様が瞬間的にイメージした平均よりも安い価格の場合に、お客様の反応は「まぁ、安いか!」となるでしょう。つまり、それは「あなたの求めてる反応」となります。
あなたが「着地させたい金額」をそのまま提示して、商品の良さを説くよりもまずは金額で他者との差別化を「あなたのトークで意図的に設定する」ことができます。
人は物事を判断するときは必ず基準点を設定するものです。そんな人のココロの動き、心理を上手く活用しましょう。
先行提示した金額次第で、後続提示した金額への認知を意図的に歪めることができれば、あなたの売り込みは少しは楽になることでしょう。
心理テクニック8:「返報性の規範」理解で印象UPを狙う
あなたは返報性の規範という言葉をご存じですか?
返報性の規範とは…他者から受けた利益や好意に対して、それと同種、同程度のものを返すべきであるという規範。・・・(中略)・・・なお、自己開示の返報性や好意の返報性も、この規範に従った行動と考えられる。
つまり「返報性の規範」とは、あなたとお客様の間で機能させるべき社会的モラルであると考えましょう。そして、この返報性の規範でも営業で注力すべきは好意の返報性となります。
好意の返報性とは人は「好意」には「好意」を返す、という心理テクニックです。この心理テクニックから考えるとあなたはまずお客様に好意を抱き、抱いてもらえるようなアプローチを心掛けましょう。
外見シリーズであれば、アプローチは比較的容易となります。
- いい靴ですね!
- いいスーツですね!
- オシャレな時計ですね!
- スーツはオーダーメイドですか?
など。あなたがお客様に興味を抱きていることでお客様もあなたに興味を抱くきっかけになります。
また、内面シリーズであれば、少し相手の気持ちをアイスブレイクする意図も兼ねて余談として、
- これまでのキャリアを聞く
- 仕事での成功秘話を聞く
- 相手の“自慢話し”を引き出す
などとなります。
このように相手に好意をぶつけることで好意が返ってきやすくなりますが、好意の返報性は広義には返報性の規範に含まれる。返報性の規範は社会的モラルのようなものであるため、あなたとお客様の間にモラルが機能する必要があります。上辺だけの表現や「好意を返して欲しい」というような前提を持ったアプローチでは社会的モラルは機能しないことを覚えておきましょう。
心理テクニック9:「単純接触効果」で印象UPを狙う
単純接触効果とは文字通り、アポイントの回数やメールや電話なども含めた単純な接触を繰り返すことにより生じる効果となります。
単純接触効果とは…特定の中性刺激に繰り返し接触するだけで、その刺激に対して好意的な態度が形成される現象。・・・(中略)・・・接触回数が増加するにつれて単一の反応傾向が優勢になる結果、反応競合が少なくなり、不快な状態が解消される。これが刺激に対する好意的な評価につながるという。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
デキる営業マンの中には「近くに寄ったので!」といって得意先に手土産を持って現れる人がいます。これはまさに単純接触効果が生じやすいテクニックだと言えます。好意的な接触が相手の不快な状態を解消することで好意的な感情を芽生えさせるのです。
単純にして分かりやすい心理テクニックと言えるでしょう。
ただし、接触の仕方が「不快」を伴うものである場合は「単純接触効果」は機能しないどころかマイナスに作用するので注意しましょう。
営業心理テクニック会話のなかでの実践編
心構え編ではあなたが営業に行く前に知っておいてもらいたい心理テクニックを紹介しました。心理テクニックは小手先のモノから相手との信頼関係を築くためのテクニックまで幅広く存在しています。
ここからは会話のなかで瞬間的に機能する心理テクニックを紹介します。
心理テクニック10:「顔面フィードバック仮説」で営業の空気感に和らぎを!
きっと営業への苦手意識はあなたの心底に根付いていることでしょう。そうなると、苦手意識は表情にも表れます。
デキる営業マンは心理テクニックに固執することなく、無意識に相手の心理に働きかけることができている人たちです。一方で、営業が苦手な人は苦手を克服するために心理テクニックを頭に叩き込むこと必要があります。
とは言っても苦手意識はすぐには消えないモノ。そんなときはまず笑顔になることです。
顔面フィードバック仮説とは…感情は顔面筋と腺の活動の生得的な反応パターンの中枢へのフィードバックの結果として生じるという。・・・(中略)・・・表情フィードバック仮説と呼ばれることもある。抹消から中枢へのフィードバックが感情経験を喚起する。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
心理テクニック「評価懸念」とも関連付けると、あなたは評価を被る(受ける)と思い込み過ぎているため、営業の都度「緊張状態」に誘われてしまいます。
評価懸念そのものを解消できるほどに業績が残り始めれば良いのですが、簡単にはいかないことでしょう。そこで活用すべきがこの「顔面フィードバック仮説」となります。
人間の脳は目・耳・鼻・口などの感覚器官の働きと大きく関連しています。
“意図的”にでも無理矢理に作った笑顔
↓
筋肉の組み合わせが脳へフィードバックされる
↓
表情にあった感情になれる!
緊張は派生するものです。あなたの緊張はお客様にも伝わることで、不要な身構えを生じさせてしまいます。あなたの緊張はあなただけの緊張に留まらずに営業の結果にも悪影響を与えてしまうほどのマイナス要素を持っています。
そのため緊張を打ち消すことが最も望ましいですが、緊張は簡単には拭い去れないのも事実です。そこで「顔面フィードバック仮説」を積極的に活用するようにしましょう。
心理テクニック11:「社会的交換理論」の理解で印象UPを狙う
社会的交換理論とは信頼関係を構築する心理テクニックです。
社会的交換理論とは…社会的交換とは、人間の社会行動や対人間の相互作用にみられるさまざまな行動のやりとりをさす。日常の何気ない会話、儀礼的行動、対人交渉、取引き、報酬の分配、対人魅力などがそれにあたる。こうした、対人間のやりとりを理論化したものが社会的交換理論である。・・・(中略)・・・社会行動を最低二者間の間でなされる有形、無形の報酬あるいはコストとなる活動の交換と捉え、社会行動の基本行動の分析を行っている。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
この理論に従えば、社会で私たちは単に物を交換するだけではなく愛情やサービス、情報といった
無形性(=形のない)のモノも交換していることにもなります。
では、会話(コミュニケーション)で頻繁に“交換”されるものって何でしょう?それは強化刺激としての「うなづき」や「相槌(あいづち)」です。
相手の「発話」に対する「うなずき」は異なるチャネルでの交換を促進する。
「うなずき」(=相づち)は話し手が好意を持つ要因
↓
会話での反応は社会的承認欲求の満足をもたらし、相互作用促進の強化因子となる!
となります。
緊張して話しが苦手なあなたはついつい「自分の話し」をしてしまいます。でも関係性を構築する上では、相手の話しを聞き、「うなずき」や「あいづち」を返すだけでも十分な効果があることを忘れないでください。
心理テクニック12:「ミラーリング効果」で印象UPを狙う
顔面フィードバック仮説にも出てきましたが、緊張は派生します。一方で笑顔を作ることで笑顔も派生できればと考えるなら、ミラーリング効果がおススメです。
ミラーリング効果とは…人は「自分と同様の仕草や動作を行う相手に対して好感を抱く」心理を持っているとされる心理現象。
今回は意図的にミラーリング効果を演出することを紹介しますが、実際にあなた自身もこれまでの人生でミラーリング効果を体験していることがあるでしょう。例えば、友人が鼻歌や口笛を吹いているとそのメロディそのままにあなたも鼻歌を口ずさんでしまったという体験をしたことがありませんか?
これは仲間意識があると自然に相手の行動や言動を模倣してしまう心理作用です。おススメはお客様や商談相手も仲間だと思って対応することで「自然と類似の行動が生じる」パターンとなります。
でも、行動はうつるほどの強い仲間意識は到底持てないと感じるあなたは、
- 相手が飲み物を飲んだタイミングで飲み物を飲む
- 相手が資料を見た時点で資料を見る
- 相手が笑顔になった時点で笑顔になる
- 相手が頭を抱えたら一緒に悩む
など。相手の行動と類似の行動を取ることで無意識のうちに相手があなたに好意を抱くようになることがあります。
ただし、無理矢理かつ不自然なミラーリングは相手に違和感や不信感を抱かせることもあります。
心理テクニック13:「ハロー効果」で印象UPを狙う
相手への仲間意識は簡単には持てないかも、と考えたあなたにはハロー効果の活用がハマれば、お客様に仲間意識を抱いてもらうことができます。
ハロー効果とは…光背効果、後光効果ともいう。他者がある側面で望ましい(もしくは望ましくない)特徴を持っていると、その評価を当該人物に対する全体的評価にまで広げてしまう傾向。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
例えば商談相手が「実は僕は釣りが趣味でね~」と伝えてくれたとします。
ここでこの会話にハロー効果を当てはめてみましょう。
- 相手の趣味、釣りがアクティブじゃないと否定
- 仲間と一緒の趣味じゃないと否定
- 会話が気づけば自分「軸」
この3点をもって、ハロー効果に従えば、評価者であるお客様はあなたの全体の印象をすべてネガティブなものに捉えてしまうでしょう。
もしここで、
と言えれば、お客様は「釣り好きに悪い奴はいない」という気分にもなり得ます。そうなればあなたはお客様からしたら望ましい特徴を持った人物となり、あなたの全体的な評価は上がります。この評価の上がり方が商談の成果に直結することは多々あります。
「超・基礎編」でもお伝えした通り、営業という場面では戦術的かつ主張的なコミュニケーションが求められます。そして、あなたの営業のゴールは成約に至ることです。ありのままの自分ではなく印象操作をして見せたい自分を創ることが非常に大切です。
心理テクニック14:「ABXモデル」で印象UPを狙う
先ほどの「釣り」の話しは、認知のバイアスがかかるハロー効果だけではなく、この「A-B-Xモデル」でも確認しておきましょう。
A-B-Xモデルとは…ニューカムの提唱した社会的相互作用の理論。彼は集団の最小単位である二人の人物ABと環境内の事物XとからなるA-B-Xシステムを想定し、社会的相互作用、特にコミュニケーション行動の発現過程を理論化した。このモデルによれば、AB間でXに対する態度に食い違い(非対称性ともいう)が存在したならば、そのA-B-Xシステムにおいて対称性に向かう緊張が発生する。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
このような理論である。
つまり、ある事象「X」に対する二者「A」および「B」の態度が不一致の場合にお互いの関係に緊張が生じ、一致させようとするコミュニケーションが作用する心理メカニズムがあるとしている。
釣り好きのお客様は、あなたが釣りが好きではないと分かった時点で、
- あなたに釣りの良さを伝えて、あなたの釣りに対する気持ちを「+」に転換しようとする
- あなたに嫌悪感を抱き、あなたへの評価を「-」にする
このどちらかの心理作用を起こすことで気持ちの均衡を保つことになるという理論です。一般的に、
認知要素間に矛盾がある場合には認知的不協和という不快な緊張状態に陥る
とされます。つまりあなたが商談相手の趣味を否定したことで、あなた自身に望ましくない特徴があると判断して全体の評価が落ちる(心理現象であるハロー効果の発生)と同時にあなた自身に対して、自らのバランスを保つためにあなた自身への評価を「-」にしてしまうのです。
心理テクニック15:「バーナム効果」の活用で印象UPを狙う
バーナム効果は商談相手へのアプローチの段階でイメージしておくべく心理現象です。
人の性格は「十人十色」ですが、実は表面的な心理は共通しています。
バーナム効果とは…多くの人々にあてはまるような一般的なパーソナリティ記述を、自分にあてはまる正確なものとして受容する傾向。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
つまり、誰にでもあてはまるような文言を並べることで相手の心理のグリップを掴むことができます。例えば、
それはそうです。この記述はほとんどの人に該当する内容だからです。でも、このほとんどの人に該当する内容を二者間で伝えると「この営業マンは鋭い!」という商談相手からの高評価を得ることが可能になります。
人間的な「高評価」を得ることは営業の場面では何よりも大切です。この評価をもってして商談が決まることもあります。
営業では、
相手のメンタルグリップを掴みに行く!
ことを意識したアプローチができると良いでしょう。
知っておくべき心理、説得の3技法
ここでは、これまでとは色合いを変え、人を説得する上で「説得的コミュニケーションの理解」でクロージング率UPすような心理を学びましょう。
心理学的には説得的コミュニケーションでは、
- 信憑性
- 魅力
- 勢力
以上の3要素が必要だとされています。この中でも身近によくある例が信憑性です。
信憑性で分かりやすい例は、
- 「お医者さんが言っているから」
- 「弁護士の先生が言っているから」
などでしょう。
つまり発言をしている人が「誰もが認知する」しっかりとしたライセンスを持っていればその意見は格段に力を持つことになります。
そのため、世間には、
「〇〇大学〇〇医学博士監修」
といった表記が広告では散見されます。
それほどに信憑性は「購買意欲に向かわす」という態度変容に大きな影響を与えていることが分かります。
でも、一人の営業マンが商談相手の態度変容におよぶまでに信憑性を高めることは容易ではありません。そこで心理テクニックとして説得的コミュニケーションに存在する技法を覚えておきましょう。
心理テクニック16:フット・イン・ザ・ドア法
フットインザドア法とは…最初に受け入れられやすい要請をし、これを受け入れさせることによって、本来の目的であるより大きな要請に対する受諾の可能性を高める心理テクニック
これは「段階的要請法」とも言われる心理テクニックになります。
これは一つの小さな頼みごと(相手にとって受け入れやすい要請)を出し、相手が一度、その要請を受け取ることで、相手の態度は変容をはじめ、結果的は「あなたの要請を最後まで受け入れよとする心理」に着目した心理テクニックになります。
人は一般に、「一貫した態度をとることが正しい」という認識をしています。そのため、一度「受諾する」と最後まで「受諾すべき」という人の心理を応用したテクニックとなります。
心理テクニック17:ドア・イン・ザ・フェイス法
ドア・イン・ザ・フェイス法とは…拒否されることを見越して最初に大きな要請を出し、その大きな要請に対する拒否を引き出すことにより、次の小さな要請に対する受諾の可能性を高める心理テクニック
これは「譲歩的要請法」とも言われる心理テクニックになります。
この説得の心理テクニックには、前述の「返報性の規範」が機能しています。
つまり「人」は「人」の「譲歩」には「譲歩」を返すという「好意の規範」が働くことを意識した、心理テクニックと言えます。拒否を前提に大きな要請を出し、そこから要請を譲歩したかのように見せることで相手の「譲歩」も引き出そうとする心理テクニックになります。
説得を受ける側、商談相手の心理は、
「相手が譲歩してくれているし、自分も譲歩しなければなならない」
となります。
ただ、「譲歩」に「譲歩」が返ってくる場合は相手の関係性がある程度築けているときなのでまずは関係を築く必要があります。
心理テクニック18:ロー・ボール法
フット・イン・ザ・ドア法、ドア・イン・ザ・フェイス法と並行して出てくる心理テクニックにロー・ボール法という心理テクニックが存在しています。ただし、これはおススメできないので、参考程度にとどめておいてもらえばよいでしょう。
ロー・ボール法とは…最初に偽りの好条件を呈示して要請をとにかく受諾させることにより、次にその好条件を取り消した場合の要請の可能性を高めようとする心理テクニック
例えば、あなたが商談相手に
「もし〇〇をご契約頂ければ、△△を差し上げます!」などの“偽り”の好条件を呈示することで、商談相手をあなたの望ましい方向へと変化させるという説得の技法となります。
あるいは“偽りの好条件”を示した後に好条件の部分のみを取り除いてしまうといった心理テクニックになります。
ただし、これは心理テクニックというよりはただの交渉術でしょう。
人の「否定的」な心理から営業アプローチをする心理テクニック
これまでに紹介してきた心理テクニック以外にも無数に心理テクニックは存在しています。ここでは思考を変えて、「否定的」な面から営業のアプローチを考えてみましょう。
心理テクニック19:恐怖喚起コミュニケーションで態度変容を起こす
恐怖喚起コミュニケーションとは…説得の受け手に恐怖感情を経験させることによって、説得効果を高める方法。説得のメッセージ要因における否定的、情緒的アピールの一つ。推奨された行動をとらないと、恐ろしい結果を招くと脅かす説得法
売り込みを行う商材・商品によっては非常に効果的な心理テクニックとなります。
〇〇を導入しないと恐らく御社は〇〇のリスクにさらされる
など、が典型的な恐怖喚起コミュニケーションとなります。つまり、受け手に恐怖や不安を喚起させることで顧客の行動変容を促す説得的コミュニケーションの一つになります。
(心理)不安や恐怖は基本的に皆が避けたい
↓
(思考の方向)要請を受け入れたら恐怖や不安を低減できる?
↓
(意思決定)不安や恐怖を回避するために応諾する
心理テクニック20:「心理的リアクタンス」への意識を強める
恐怖喚起コミュニケーションに関連して、「自由への回復」というテーマに心理的リアクタンスについても見ていきましょう。
心理的リアクタンスとは…態度や行動の自由が脅かされた時に喚起される、自由に回復を目指す動機づけ状態。説得への抵抗をもたらす要因の一つ。押しつけがましい説得は、反発を招く。自由とは、ある行動を自分がとりうるという信念であり、脅威とは、ある事象によってその行動をとることが困難になったという認知をさす。自由が確信されているほど、自由が重要であるほど、また自由への脅威が大きいほど、喚起されるリアクタンスも大きい。
引用:有斐閣『心理学辞典』より
恐怖喚起コミュニケーション同様に、売り込む商材の特性にもよりますが、その商材を購入あるいは導入することで顧客が「結果的に自由を獲得できる」場合は、有効な心理テクニックになります。
人は自由が制限されそうになったときは自由への回復、それ自体をモチベーションとします。
もしあなたが売り込む商品が結果的に顧客の自由を算出するモノだとしたら、
「これがあれば〇〇だから、自由に〇〇できる」
と商談相手に思わすことができれば、すんわち顧客の心理的リアクタンスへの意識を強めることで、求める成果を生じることができるでしょう。
「【すぐ使える】営業心理テクニック20選」のまとめ
営業を得意としなくとも営業をしている人たちはたくさんいます。そんな人たちは日々「数字」に追われて気づけば疲弊しているでしょう。また、営業の成果が出ずに根深い苦手意識を抱いている人もいるでしょう。
そのような人たちが営業を気軽な気持ち、“ゲーム感覚”で捉え、動き出せたら何よりです。実際にはゲームではなくても“ゲーム感覚”を持てるようになれば、少しだけでも気分が楽になるでしょう。
スポーツの世界では、「名選手がいい指導者になるとは限らない」という言葉があります。これはビジネスの世界にも通じます。「デキる営業マンがいい指導者になるとは限らない」ものです。それはなぜでしょうか?
なぜなら、デキる営業マンの多くはここで紹介した心理テクニックを“感覚・感性”で行っているからです。きっとデキる営業マンたちは言語化された内容を読んで「確かにな~」と自分の営業スタイルをフィードバックしていることでしょう。
でも、営業が苦手な人には心理テクニックにも通じる“感覚・感性”がありません。だからこそ、言語化された人の心理とココロのルールを体系的に把握する必要があります。
言語化された物事を体系的に理解できたとき、あなたはデキる営業マンを超える「スーパー営業マン」へと変貌を遂げる非凡な才能を持っているかもしれません。